弁護士ブログ/ー老いと法律ーその1 幸せな老後とは何か

人は心身とも正常なうちに、自分の老後についてどのような展望を持っているのでしょうか。老後は「子どもが老後を見てくれる、何の心配もない」「一定の蓄えがあるから大丈夫。自分の責任で処理する」「老人施設で世話になる」と漠然と考えていませんか。そして、問題を先送りし、身体が不自由になってその場凌ぎで対応する、あるいは判断能力が衰えた時点で親族(相続人予定者)主導で老人施設に入所するといったケースが多いのではないでしょうか。

いずれも、老後の具体的な展望がないのです。我が国では、老後の展望を議論すること自体タブー視される傾向にあります。老後のことを言い出すこと自体「縁起でもない」と回避あるいは先送りし、相続人からは「自分のことを疑っているのか」と言われるか、言われなくても思われるのではないかという懸念からつい話し合いを躊躇してしまうのではないでしょうか。あるいは、親族に対する根拠のない漠然とした楽観論(ウチに限って心配ない)があるように思えます。

人は老いを迎えると、介護と財産管理の問題に直面します。老いを迎える前に老いた場合の確かな展望を持ち自己実現を図ることは、個人が自律しているはずの民主主義社会において当然の権利ではないでしょうか。

実は、老いを迎える親と次世代を担う子などの親族(相続人予定者)との間には利害対立があります。つまり、自分の生前持っている財産を自分の意向に沿って自由に使いたいという親の立場と親の財産を自分や家族のために有効活用したいという子の立場とは必ずしも利害が一致しないのです。もちろん、法律的には現に財産を持っている親に主導権があるはずなのですが、若さゆえに精神的、身体的優位に立つ子側からの様々な圧力あるいは子への同情、義理人情などから親の自己実現が妨げられることが見受けられます。そうなると、親の老後の展望は法律や福祉の専門家に公平中立の立場で入ってもらうのが適当ではないかと考えられます。

老後の確実な介護、財産管理を実現するためにはどうしたらいいのでしょう。法律上、地域福祉権利擁護事業や成年後見制度など様々な仕組みが用意されています。もちろん、信頼のおける子などの親族がいるから心配いらないという方はそれで結構です。しかし、どのように実現してゆけばいいのかわからない、子に全幅の信頼をおいていいのかといった疑問をお持ちの方は地元の社会福祉協議会や弁護士にご相談ください。

我が国ではこれまでに経験したことのない高齢化が進行しています。団塊の世代を中心にした高齢者は比較的財産の蓄えがありますが、子育て世代は財産の蓄えも公的援助等も十分ではなく生活に精一杯という傾向が見られます。そうなると、親の財産に期待せざるを得なくなり、親子の対立がおき易くなります。これを防ぎ、自己実現を図るためには子らとの一定の距離を置いたドライな財産管理が必要です。

 

高齢者問題と弁護士の関わり

老人介護とか老人の財産管理になぜ弁護士がかかわるのか。弁護士が自分で介護(療養看護)をしてくれるのか、仕事が違うのではないかと思われる方がおられると思います。

もちろん、弁護士が直接介護をする訳ではありません。

高齢者の介護や治療が必要となった場合、介護施設や病院等と介護に関する契約、医療契約を結び、時には保証人をつける必要が出てきます。これらは法律問題です。有料老人施設に入所する場合には、入所に当たり相当高額の保証金を払い込む必要が出てきます。入所後施設とトラブル等が発生し他の施設に移りたいということがあるかも知れません。この時、きちんと精算ができるか、不当に高額な違約金を取られることはないのかなど事前にチェックしておく必要があります。これらの問題を円滑に進めるために弁護士と財産管理契約や顧問契約(ホームローヤーなどと呼ばれることがあります)を結んでおいていつでも相談できる体制を整えておくことが有用です。

また、心身とも正常なうちに、やがて訪れる老後に備え自宅を終の住処にするのか、自分に相応しい高齢者施設に入るのか、いずれにしてもどの位の費用がかかるのか等々展望を定めておくことが肝要です。合わせて、子やきょうだいがいるのであれば相続紛争を避け、報いられて然るべき相続人(親の世話をしてくれた子など)に確実に遺産が渡るようしておくことが親としての責任だと思うのです。全く親の面倒をみなかった子が相続分は平等だと言って親の面倒をみていた子どもから遺産を奪い取るといった事態は避けたいものです。子に自分の扶養を任せるならば、その子に必ず見返りを補償しておくべきです。それが扶養してもらう親の責任です。これは、親の死後に関する遺言書作成の問題でもあります。

 


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