弁護士ブログ/有機農業の将来性について

1 皆さんは、有機農業という言葉を聞いたことがありますか?化学的に合成された農薬と肥料を原則的に使わず、作物を育てる農法のことです。

2021年、セイロン茶で有名なスリランカは国内全土で有機農業を打ち出し実行したために、コメや紅茶の収穫量が激減しコメは自給すらできなくなり国家的危機を招いたのです。

一方で、わが国の農水省も「みどり戦略」と称し、2050年までに化学農薬の使用量50%減、化学肥料の使用量30%減、有機農業の面積を農地全体の25%に」という政策を掲げています。有機農業は、スリランカの例でもわかるとおり除草剤や殺虫剤を使えないため収量や品質の維持が困難で生産性は低いのです。過度な有機農業への傾斜は、先進地である欧州ですら懸念されているのです。

2 わが国の有機農業の耕作面積が、現在、0.6 %(2020年)の低率にとどまっているのにはそれなりの理由があります。つまり、有機農業で経営を成り立たせることがかなり難しいという実態があるのです。確かに、新規就農者が有機農業を手掛ける割合は増えているようですが、有機農業を指導できる人材は限られていること、新規就農する際には農地や機械、設備など初期費用がかかるなど、経営を軌道に乗せることは相当にハードルが高いようです。

3 有機農業への関心は、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』や有吉佐和子の『複合汚染』によって急速に高まったようです。確かに、環境保護やSDGsは重要な理念であることは否定しません。しかし、環境と調和のとれた食料システムを確立することはそんな簡単な課題ではないのです。ドローンを用いた農薬散布術、AIなどを活用した病害虫の早期検出技術、除草ロボットの普及、AIの活用といった「スマート農業技術」に過度の期待をすることも危険です。

 

「誰が農業を殺すのか」(窪田新之助、山口亮子著、新潮新書)を読んで、改めて農業の将来の厳しさを実感した次第です。

 


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