1 従来、受刑者(犯罪を犯した人)を刑事施設(刑務所が代表的)に収監する刑罰として「懲役」と「禁固」の2種類が定められていました。
しかし、2025年6月1日の改正刑法の施行後は、懲役と禁固が「拘禁刑」に一本化されます。各犯罪について定められている法定刑も、懲役や禁固から拘禁刑に変更されます。
2 従来の懲役と禁固は、刑務作業の義務があるか否かによって区別されていました。つまり、懲役では刑務作業が義務付けられていました。懲役受刑者は、1日8時間を超えない範囲で①生産作業②社会貢献作業③職業訓練④自営作業といった作業を行い、1日4500円程度(2022年度)の作業報奨金が支払われます。これに対し、禁固では、刑務作業の義務はなく、希望する受刑者に刑務作業が許可されることになっていました。
新設の拘禁刑の受刑者は、受刑者の改善更生や社会復帰を図るために必要と認められる場合に限り、刑務作業をさせることになります。刑務作業を免除または軽減された受刑者には特性に応じた更生プログラムが予定されています。
3 拘禁刑が新設された理由は、主に以下の理由によります。まず、①懲役と禁固を必要性が乏しいことです。入所受刑者の99.7%は懲役刑であること、しかも禁固受刑者の86.5%が刑務作業に従事しているのです。次に、②刑罰の目的として、再犯防止がより強調されるようになったためです。刑罰には、犯した罪に対してペナルティを与えることにより将来の犯罪を抑止するという目的がありますが、犯罪者に対して直接的に働きかけることによって再犯を防止しようという考え方が重視されるようになりました。背景には、出所した人が再び罪を犯すケースが多いという現状があります。
4 拘禁刑の受刑者に対して行われる更生プログラムの例を一部紹介します。①知的障害者や精神障害者の社会復帰を促す福祉支援課程②薬物依存・ギャンブル依存症などからの脱却を促す依存症回復課程③学力向上・就労技術習得を促す若年課程④対人スキルの向上などを促す新たな形での刑務作業などです。
5 拘禁刑は、本年6月1日以降に起きた事件、事故に適用されますので、実際に拘禁刑の判決を受けて入所するのは今秋以降と言われています。