弁護士ブログ/書籍発売のお知らせ

弁護士の尾畑です。昨年12月20日に、「国際人権個人通報150選」という書籍が発売されました。

国連のいくつかの委員会では、各加盟国内の手続きによって救済されなかった人権侵害について、侵害をうけた個人から直接に通報を受けて、人権侵害の有無について判断し、締約国に対し見解を示すことがあります。

本書は、これらの国連機関の判断から150件を集めたものです。当職も、パキスタン人の難民認定事例について、作成に参加しました。

 

ところで、本書は日本に対する事例は含まれていません。たとえば、代表的な国連人権条約である自由権規約では、選択議定書に個人通報制度が定められていますが、日本は自由権規約の本体は批准しているものの、この選択議定書については批准していないためです。

 

個人通報制度は、個々の人権侵害の救済の効果ももちろんありますが、人権条約の解釈を諸外国と乖離しないようにする効果もあります。

裁判所が国連機関の解釈と異なる解釈に基づいて判決をした場合に、国連機関から人権侵害の見解がなされるとすれば、裁判所としても国連機関や、諸外国においてなされている条約解釈を意識して判決をすることが期待できます。

 

個人通報制度に参加していない本邦においては、我々弁護士が、積極的に裁判所に対し各種の国際条約上の権利を積極的に主張する必要があります。本書の執筆において当職が参加した部分はわずかですが、活用されれば幸いと考えております。


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