弁護士の尾畑です。今日は前回(https://www.takagi-law.or.jp/law-column/3410)、前々回(https://www.takagi-law.or.jp/law-column/3380)に引き続き、担保権をテーマにしたブログです。
前回は民法に定められた担保権についてご紹介しましたが、今回は民法上に定めのない「非典型担保」についてお話します。もっともなじみ深いのは、カーローンにおける「所有権留保特約」がこれに当たります。
民法に定められた典型担保の内容は明確ですが、このため却って使いにくい部分があります。
カーローンを例にして見てみましょう。
まず、自動車は不動産ではないので抵当権は使えません。
質権を設定した場合、質物である車は質権者が保管する必要があります。代金を完済するまで車を買った人が自動車を使えないので実用性がありません。
留置権も同様です。留置権者は物を引き渡してはいけないので、車のローン売買には使えません。
先取特権は利用できる可能性がありますが、抵当権のように法務局で登記に記載されるわけではないので、行使には手間がかかります。また、転売などされてしまった場合、買主から取り戻すことはできません。
そんなわけで、車の売買に便利に使える担保物権がないので、考え出されたのが「非典型担保」です。
非典型担保の代表的なものとしては、「所有権留保」「譲渡担保」「ファイナンスリース」「仮登記担保」「売渡担保」などがあります。
名前は異なりますが、仮登記担保を除けば基本的な仕組みは同じです。いずれも、担保にするものの所有権を債権者が持ち、債務者は利用権限だけを預かることになります。普通自動車のカーローンの場合、自動車検査証記録事項の用紙に、所有者としてローン会社や販売店がの名前が、使用者として購入者の名前が書かれています。
そして、無事にカーローンを完済できれば所有者名義を購入者に変更しますが、途中で支払いが滞ってしまった場合、所有権に基づいてローン会社や販売店が車を第三者に売却し、未払い代金に当てるというわけです。
仮登記担保はこれとは少し異なり、債務支払いの代わりに土地や建物を債権者がもらうという内容の所有権移転登記の仮登記(予約のようなもの)をあらかじめしておくことで、抵当権より簡便かつ有利に似たような効果を発揮しようとしたものです。しかしながら、非常に債権者に有利な手法だったため、判例や法律により様々な制限が加えられ、現在はあまり見かけなくなりました。
非典型担保のメリットとしては、典型担保より融通が効く事、そして、特に債権者側にとっては、所有者として担保の目的物を売却するため、裁判所を通す必要がないことが挙げられます。
ビジネスの分野で使われることが多いですが、カーローンを契約されている方は、一度契約書でどんなことが決められているか、確認してみても面白いかもしれません。