弁護士の尾畑です。今日は前回(https://www.takagi-law.or.jp/law-column/3380)に引き続き、担保権をテーマにしたブログです。
今回は、民法に定められた4つの担保権、「典型担保」についてご紹介します。
- 抵当権
抵当権は、担保という言葉のイメージにかなり近い担保権です。実務上もよく目にする権利であり、「家を抵当に入れる」というときは、この「抵当権」を設定することを言います。
抵当権は担保を設定する人が、自らの所有する不動産に設定する権利です。最も良くあるパターンとしては、家を買ったり建てたりするためにお金を借りたとき、自宅やその土地について、債権者のために設定するものです。お金を借りる人と抵当権を設定する人は同一人物である必要はないので、例えば子どもが家を建てる時に親が土地を提供し、その土地に住宅ローンの抵当権を設定する事もできます。
もし、お金を借りた人が失業したり、事業に失敗するなどして返せなくなったときは、債権者である銀行などは、裁判所に対して不動産の売却(競売)などを申し立て、売れた代金から貸したお金を回収することになります。
抵当権の特徴として、法務局で登記をする事が挙げられます。このため、債権者は土地や建物そのものを抑えておかなくても自分が抵当権を持っていることを証明できるので、抵当権を設定した土地や建物でも今までどおり使い続ける事ができます。
また、土地や建物が誰かに売られてしまっても、抵当権があることは登記によって明らかですので、買い手に対して抵当権の実行のための競売を申し立てる事ができます。
お金を借りた人が破産した場合ですら、あらかじめ抵当権が登記してある土地建物は競売することができます。
土地や建物などの不動産を持っている人しか使えず、登記も面倒ですが、抵当権は極めて強力な担保物権という事ができます。このように強力な担保物権を設定するからこそ、銀行も安心して数千万や、場合によっては一億円以上になる住宅ローンを貸し付けることができるわけです。
- 質権
抵当権と似た担保物権として「質権」があります。「質に入れる」「人質」「質屋」など、耳馴染みはいい言葉ですが、抵当権ほどは見かけません。抵当権は不動産に限った担保権ですが、質権の対象は不動産でも動産でもよく、債権を質権の対象とする事もあります。
質権があまり使われない理由として、質に入れるものを債権者に預ける必要があることが挙げられます。つまり、お金を貸す代わりに質権の対象となるものを質屋に預け、お金を払えば戻ってくるというわけです。
もちろん、この間預けたものは使えなくなるので、質権の対象にできるのは「金銭的価値があるけれど、手元になくても良いもの」に限られます。なかなか思いつかないのではないでしょうか。結婚指輪に給料3ヶ月分などというのは、質入れを想定したものかもしれません。
近年比較的よく使われるのは、「債権質」、大雑把にいうと後々お金をもらえる権利を預ける方法です。例えば生命保険や、以前他人に貸し付けてまだ弁済期日が来ていないお金を質に入れるものです。手元においていてもすぐ役に立つわけではないものを預けて、お金を借りようというわけです。
質権もまた、お金の支払いがなければ、預かったものを売って支払いに当てることになります。いわゆる「質流れ」です。
- 留置権
留置権は、抵当権や質権とは異なる点が多いです。まず、権利の設定行為がなく、自動的に発生する担保物権です。また、物を売却して支払いを受ける効果はありません。
具体的にはどのような物でしょうか。
身近な例として、車を壊してしまい、修理工場に預けるというパターンがあります。車の持ち主は修理工場に車を預けて、修理を依頼し、無事修理は完了しました。持ち主が車を取りにきたので、修理工場は持ち主に対し、代金を請求します。しかし、持ち主はうっかりお金を使いすぎて、次の給料日まで払えないというのです。
この時、修理工場が持ち主に対し、「金を払うまで車は返さない」と言う権利が、留置権です。
物を他人に預けている人が、その物に関係して支払わなければいけない債務があるのに払わないとき、払うまで物は渡さない、という権利です。
聞きなれない言葉かと思いますが、抵当権や質権に比べると、感覚的にわかりやすいかもしれません。
- 先取特権
先取特権は、留置権と同じく、自動的に発生する担保物権です。ただし、効果は抵当権や質権に近く、先取特権の対象となる物を売却し、そこから支払いを受ける事ができます。
いくつかのパターンが民法に定められており、様々な理由から優先的な支払いを受けるべき債権が定められています。
身近な物としては、給料や、水道光熱費の代金、大家さんが貸家内の物から優先して支払いを受ける権利などがあります。
他の担保物権と違い、先取特権の中で様々な種類があるので、全てを把握することは容易ではありません。
以上、簡単ですが、民法に定められた4つの典型担保のご紹介です。次回は、民法に定めのない「非典型担保」をいくつかご紹介します。