民法では、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、…慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべきものが承継する」とされており、遺産分割の対象とはなりません。祭祀財産の性質上、遺産分割によって複数の人に分け与えることは好ましくないからです。
これにより、祭祀財産については相続とは別個の基準で承継されます。
なお、遺体や遺骨についても、相続財産として遺産分割の対象とはならず、その所有権は祖先の祭祀を主宰すべき者に帰属すると考えられています。
祭祀財産の承継者は、①第一順位が「被相続人が指定した者」、②第二順位が「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者と定められた者」、③慣習が明らかでないときは、第三順位として、「家庭裁判所の審判又は調停により定められた者」とされています。
遺言で祭祀の主宰者を指定するときは、例えば、「第○条祖先の祭祀を主宰すべき者として、長男○○○○を指定する。」といった形で記載します。
遺言がない場合は、親族での従前の扱いなどを考慮しながら、話し合いで祭祀の主宰者を決め、もし話し合いが調わない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになるでしょう。
弁護士に委任すると……
祭祀財産の取扱いはもちろん、遺産分割全体についても、ご相談・ご依頼をお受けしております。適正な遺産分割を迅速に実現するには、法律専門家の助言が有効ですので、お困りの際は高木光春法律事務所にご相談ください。
法律上、相続人は、被相続人の一身に専属する権利を除き(例えば扶養請求権など。)、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされており、債務も例外ではありません。したがって、借金や保証債務も相続されます。
借金などの金銭を支払わなければならない債務については、遺産分割とは無関係に、法定相続分にしたがって請求されてしまうので、注意が必要です。
たとえばローン付の家について、家を引き継いだ人だけが支払を続けたい場合、債権者である銀行などと交渉して遺産分割協議書とは別途に銀行との間の合意書を作る必要があります。
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上述のように、遺産分割の対象となるのはプラスの財産のみですが、実際上は債務の内容などもにらみながら分割協議にあたるのが一般的です。
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先日、父が亡くなり、遺品を整理するとともに、遺産分割協議に向けて父の財産の洗い出しをしているところです。遺産分割の対象となるのは、どのようなものでしょうか。
法律上、相続人は、被相続人の一身に専属する権利を除き、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとされています。
遺産分割としてよく問題となるのは、不動産(土地、建物)や預貯金です。
しかし、実は、預貯金(金銭債権)は、相続開始と同時に当然分割により分割は終了していると考えられており、相続人全員の合意がないと遺産分割の対象とはなりません。そのため、遺産分割調停で合意ができず、審判に委ねることとなった場合に、相続人の一部が預貯金の遺産性に異議を唱えると、預貯金は審判の対象とされないこととなります。
このように、遺産分割の対象となるか否か問題となる財産や、あるいは、対象とはならないが、遺産分割の対象に含めてよいか問題となる財産のほか、そもそも遺産であるかどうかが問題となる財産など、細かく見ていくと、どの財産が遺産分割の対象となるかの判断は、一筋縄ではいかないことが分かります。
具体的にみていくと、次のようなものがあります。
生命保険金
生命保険金は、被保険者の死亡後に、受取人が固有の権利として保険金請求権を取得するものであり、被保険者以外を受取人に指定した場合,遺産ではありません。したがって、原則として遺産分割の対象とはなりません。
ただし、保険金額が著しく多い場合、例外的に遺産として扱われる場合があります。
死亡退職金
死亡退職金は、賃金の後払いとしての性格と、遺族の生活保障としての性格があり、前者に着目すると遺産性を認める方向に、後者に着目すると遺産性を認めない方向に傾くことになります。
遺産性の有無は一律に決せられるものではなく、支給基準、受給権者の範囲・順位などの規定内容により遺産性を検討するものとされています。
代償財産
① 代償財産
代償財産とは、遺産の処分によって得られた別の財産のことをいいます。遺産である不動産を売却した場合の売却金が代償財産にあたります。
遺産分割前でも、相続人全員の同意がある場合には、共有状態の遺産に含まれる個々の物や権利を処分することができます。
その場合に、代償財産が相続の対象になるかという問題が生じます。すなわち、代償財産が相続財産に含まれるとすれば、遺産分割を経るまでは相続人が代償財産を取得できないことになるからです。
② 最高裁昭和54年2月22日判決
相続人全員の同意によって売却された土地代金について、
売却した土地は、遺産分割の対象たる相続財産から逸出するとともに、その売却代金は、これを一括して共同相続人の一人に保管させて遺産分割の対象に含めると合意するなどの特別な事情のない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得すべきものである、 と判示しています。
すなわち、代償財産は、特別に遺産分割の対象とする合意がある場合を除いて相続財産に含まれないこととなります。
各相続人は、遺産分割前であっても、自己の相続分に応じた代償財産の取得や引渡しを請求できることとなります。
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遺産分割にあたっては、相続財産の範囲を確定する必要がありますが、遺産性の判断に困ることは少なくありません。
後日、トラブルが生じないよう円満且つ迅速に遺産分割をまとめるには、法律専門家のアドバイスが有効です。お困りの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。
相続欠格、廃除とはいずれも、本来であれば相続人になれた者が、一定の事情により相続できなくなる場合に関する規定です。相続欠格事由は法定されています。これに対して廃除は、家庭裁判所の調停、審判によって相続権が剥奪されます。
相続欠格とは、相続に関して不正な利益を得ようとして、不正な行為をしたり、又は不正な行為をしようとした者から相続人資格を剥奪する制度です。
どのような場合に相続欠格が生じるのか(相続欠格事由)は、法律によって定められており、具体的には次のとおりです。
- 故意に被相続人又は先順位若しくは同順位の相続人を死亡させたり、又は死亡させようとして、刑に処せられた場合
- 被相続人が殺害されたことを知っていながら、告訴・告発をしなかった場合
- 詐欺・強迫によって、被相続人の相続に関する遺言の作成・撤回・取消・変更を妨げた場合
- 詐欺・強迫によって、被相続人人に相続に関する遺言をさせ、またはその撤回・取消・変更をさせた場合
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合
相続人の廃除の意味
相続人の廃除とは、被相続人からみて、相続させたくないと考えるような非行があり、且つ被相続人がその者に相続させることを欲しない場合に、被相続人の請求に基づいて、家庭裁判所が審判又は調停によって、相続権を剥奪する制度です。
遺産の分け方などについては、もともと遺言で指定することができますが、子、配偶者、直系尊属には遺留分(最低限の取り分)があり、単に他の者に遺贈しただけでは、遺留分侵害額の請求が可能になってしまいます。
そこで、遺留分も含めて相続権を剥奪するのが、廃除という制度です。したがって、廃除の対象となるのは、遺留分を有する子(及びその代襲者)、配偶者、直系尊属に限られ、被相続人の兄弟姉妹は含まれません。
しかしながら、単なる感情的な確執だけでは、廃除は認められません。審判になった場合、法律上の廃除原因(虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行)があるかの判断は、被相続人の感情・意思に左右されることなく、客観的になされます。
実務上は、父母に対する暴行・浪費癖・遊興・財産の無断売却といったもののうち複数の行為をしている場合に、「著しい非行」を認める例が多いといえます。
廃除の手続の仕方
被相続人となる方が存命の場合は、その方から家庭裁判所に対し、廃除の調停か審判を申し立てます。また、遺言で廃除の意思表示を行うこともできます。いったん廃除が認められた後でも、被相続人となる方は、家庭裁判所に対し廃除の取消を求めることができますし、遺言でその意思表示を行うこともできます。
被相続人の方が亡くなった後、遺言に廃除の意思表示があることが発見された際は、遺言執行者が遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をすることになります。
弁護士に委任すると……
一部の相続人を除外して遺産分割協議を行っていた場合、たとえ協議が調っても無効となってしまいます。そのため、協議を始める前から、誰が相続人になるのかについて、十分に確認しておく必要があります。
もっとも、相続人の範囲・順位や相続欠格事由については、分かりづらい部分もあり、相続人の範囲を確定するにあたっては、弁護士による調査・助言が有効です。
高木光春法律事務所では、相続人の範囲・順位に関するご相談もお受けしております。
代襲相続が生じるのは次のケースです。
- 本来の相続人が、被相続人の死亡以前に死亡していた場合
- 本来の相続人に、相続欠格事由が生じた場合(被相続人の死亡の前後を問わない)
- 本来の相続人が廃除された場合(被相続人の死亡の前後を問わない)
本来の相続人が、相続を放棄した場合は、代襲相続は発生しません。
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代襲相続は、相続人の範囲・順位に関するルールの一つです。
一部の相続人を除外して遺産分割協議を行っていた場合、たとえ協議が調っても無効となってしまいます。そのため、協議を始める前から、誰が相続人になるのかについて、十分に確認しておく必要があります。
もっとも、相続人の範囲・順位については、代襲相続の発生の仕方など、やや分かりづらい部分もあり、その範囲を確定するにあたっては、弁護士による調査・助言が有効です。
高木光春法律事務所では、相続人の範囲・順位に関するご相談もお受けしております。