法律コラム/裁判所から通知が届いたら

時々、裁判所から急に書面が届いた、というご相談を受けることがあります。

裁判所名義で発送される書面は、だいたい重要なものですから、いずれにしてもすぐに弁護士事務所や最寄りの弁護士会の法律相談を通じて、対応を検討することが望ましいと言えます。

今回はその中でも、比較的よく見かける3種類の書面について、簡単にご紹介いたします。

 

1 訴状

訴訟を申立てる書類です。被告が訴状を受領することで訴訟が開始します。

もちろん、受け取らなければ済むというものではありません。受け取りを拒否すると、次は「付郵便送達」という手続がなされ、こちらは郵便を受け取らなくても、届いたものとして扱われます。

住民票も動かしておらず、どこに住んでいるか分からないとなれば、今度は公示送達です。公示送達では訴状は発送もされず、裁判所の掲示板に送達する内容が張り出されて、2週間が経過すると届いたことになってしまいます。

訴状を受け取らないまま裁判が始まると、あらためて訴状を入手しなければならず、後述の期日も分からなくなってしまうので、受領拒否はお勧めできる対応ではありません。

訴状には通常、「(第1回)口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」という書類が添付されています。何はともあれ、まずはこの書面を確認するのが良いでしょう。初回の裁判期日と、反論書面の提出期限が記載されています。何の書面も出さず、初回の期日にも出席しないと、初回の期日で被告敗訴の判決がなされることが一般的です。ですから、遅くとも初回の裁判期日までには何らかの対応をしなければならないと考えてください。

訴訟が進行して判決が出た場合、判決書が当事者に送達されます。これも訴状と同じく、受け取り拒否等があると、「届いたことにする」手続がなされます。

第一審の判決に不服がある当事者は、判決の送達から2週間以内に、控訴をすることができます。

控訴がない場合、判決は確定し、判決の中に執行が必要な内容がある場合(金銭の支払い、建物の明け渡しなど)、強制執行の手続ができるようになります。金銭の支払いを命じる判決については、控訴された場合でも仮に強制執行ができる場合もあります。一般的には、銀行預金や給料の差し押えなどがなされます。

たとえ訴状を受け取っていなくても、確定した判決の内容を覆すことは極めて困難です。裁判所からの書類の送付があったら、かならず受け取って開封し、中身を確認するようにしてください。

 

2 支払督促

支払督促は、消費者金融業者や、債権回収業者などがよく使う手続です。相手方から反論がない場合に限られますが、主に金銭の支払を求める請求について、訴訟より簡易に強制執行をすることができます。また、時効の完成阻止に使われることもあります。

支払督促の手続でも、まず訴状と同じような方法で、支払督促の書面が送達されます。ただし、行方不明の時の公示送達は使えません。

支払督促には、「異議申立書」という反論書面の書式が同封されており、支払督促の内容に反論があるときはこれを記入して裁判所に提出することになります。

支払督促が送達されてから何もせずに2週間が経過すると、債権者による仮執行宣言の申立が可能になり、今度は仮執行宣言付の支払督促が再送されます。これを受け取ってから2週間経ってもまだ何も反論しないと、債権者により強制執行の手続が可能になります。

異議申立書を出せば、手続は通常の訴訟に移行して、証拠によって債権の存否を確認することになります。既に時効期間が経過している債権について支払督促がなされることも珍しくなく、このような場合時効について書いた異議申立書を出すだけで相手方が申立を取下げることもあります。

とはいえ、訴訟に比べると時間的な余裕がないので、早めのご相談をお願いいたします。

 

3 差押命令

訴訟で敗訴した場合や、支払督促を無視した場合、差押命令が送られてくることがあります。

これが来てしまうと、預金残高が債権者に持って行かれてしまったり、給料から天引きで債権者に支払がなされたりします。具体的にどのような財産が差し押えられるかは、命令書の別紙に記載されています。

特に訴状の送達を無視してしまった場合、ここまでくると手遅れのことも多いですが、「執行異議の申立」や「差押禁止債権の範囲の変更」などで対応できることもあります。また、破産手続などの債務整理が必要な場合も考えられます。弁護士に相談することも無駄ではないので、対処方法を探ってみましょう。

公正証書を作成した場合など、裁判をしなくても差押えが可能になることがあります。判決による差押えについても、判決から10年近く経過して、忘れた頃に差押えがなされることもあります。心当たりがなくても、無視はしないようにしてください。

 


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