息子への事業承継を考えているのですが、注意点はありますか?

中小企業、特に親族もしくは極近い人間関係で経営をしているような閉鎖会社にとって、事業承継は一つの大きな課題です。跡継ぎがいない場合にどうするのかという問題も生じます。
何も対策しないままに、先代の社長が亡くなり相続人が多数存在するというような場合には経営基盤が不安定になりかねません。また、業績の良い企業であれば株式時価が高額になっており、相続人である次期社長は多額の相続税に悩まされることになりかねません。更に跡継ぎがいないまま、先代が亡くなれば、会社の存続は困難となります。
これらのことが原因で、会社の継続が困難になり、ひいては雇用の喪失、地域経済の悪化につながりかねません。
そこで事業承継をスムーズに進めるために、法律は大きく3つの制度のを整備しています。
第1に、事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予制度というものがあります。相続税の納税猶予制度とは、現経営者の相続または遺贈により親族である後継者が取得した自社株式の80%部分の相続税の納税が猶予されるという制度です。一方、贈与税の納税猶予制とは、現経営者からの贈与により、親族である後継者が取得した自社株式に対応する贈与税の納税が猶予されるという制度です。
中小企業者であること等の会社の主な要件、会社の代表者であったこと等の現経営者の主な要件、現経営者の親族であること等の後継者の主な要件を満たした上で、納税猶予を続けるための主な要件を満たした場合には、納税が猶予されます。手続きとしては、経済産業大臣の認定、税務署への納税申告が必要で、期限等の定めもあるので、要件を満たすかどうか検討した上で計画的に申請する必要があります。
第2に、事業承継を円滑に行うための遺留分に関する民法の特例の制度があります。現経営者(被相続人)の方が無くなったときに備え、後継者の親族(相続人)に自社株式を集中して遺言等で承継させようとしても、他の相続人には遺留分という制度があります。この遺留分を侵害された相続人が遺留分に相当する株式などの譲渡を要求してきたような場合には自社株式が分散し、会社の経営基盤を揺るがすおそれがあります。経営承継円滑化法はこのような場合に備え、民法の特例を設けています。この特例により、現経営者(被相続人)の推定相続人全員の合意の上で現経営者から贈与等された自社株式について①遺留分算定基礎財産から除外(除外合意)、または②遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)することができます。具体的効果としては、①は除外合意によって後継者が贈与等によって取得した自社株式については、他の相続人は遺留分の主張ができなくなるので相続に伴う自社株式の分散を防止することができます。②は固定合意により、自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないことから、後継者は相続時に想定外の遺留分の主張を受けるということを防止できます。要件としては、適用会社要件、適用経営者要件、適用後継者要件を満たした上で、①推定相続人全員の合意、経済産業大臣の確認、③家庭裁判所の許可が必要です。この制度についても、様々な要件、手続きの時間的制約もありますので、法律の専門家である弁護士に相談するのが良いと思います。
第3に、円滑な事業承継のために、低利融資制度と信用保証制度があります。まず低利融資制度は①会社または個人事業主が後継者不在などにより事業継続が困難となっている会社から、事業や株式の譲渡などにより事業を承継する場合、②会社が株主から自社株式や事業用資産を買い取る場合、③後継者である個人事業主が、事業用資産を買い取る場合、④経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社の代表者個人が、自社株式や事業用資産の買い取りや、相続税や贈与税などの納税などを行う場合に低利融資が受けられる場合があります。次に、経営承継円滑化法に基づく認定を受けた会社及び個人事業主が、事業承継に関する資金を金融機関から借り入れる場合には信用保証協会の通常保証枠とは別枠が用意されています。
以上のように、法は様々な事業承継の制度を用意しています。当事務所では、個々の事務所の事情に応じ最適な事業承継の方法を提案し、計画的に事業承継を進めて行くことができます。


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