調停とは、一人の裁判官と民間から選任される二人以上の調停委員からなる調停委員会が、相続人や関係者の方々から言い分を聞き、事情を調べたうえで、話し合いにより適切な解決ができるように助言やあっせんを行うものです。
「調停」はどのように行われるのか?
相続人間で遺産分割協議がととのわない場合、まずは家庭裁判所に家事調停を申し立てることになります。(いきなり「審判」を申し立てることもありますが、大抵の場合は、まずは「調停」に付されます)
しかし、調停といっても、なかなかイメージのつかない方も多いでしょう。裁判との違いを聞かれることもよくあります。
調停は、裁判と全く別物で、一言でいえば、第三者(調停委員)を介した「話し合い」です。
双方が、それぞれ別々に調停室に入り、2名の調停委員(男女のペア)にそれぞれの言い分を伝えて調整してもらいます。相手と顔を合わせずに済みますので、冷静に話を進めることができます。
調停室は、比較的狭い部屋に、だいたい4~6名くらい座れるテーブルと椅子があり、殺風景にならないよう絵画などが飾られています。
一回に話を聞かれる時間はおおむね30分程度で、それを交互に繰り返します。そのため、相手が調停室に入っているときは、調停委員が呼びにくるまで待合室で待っていることになります。(30分で済めばよいのですが、長引くことも多く、ひどいときには1時間半以上待たされることもあります。)
なお、調停委員にお話しする際に、緊張してうまく話ができないという方も多くいらっしゃいますが、通常、調停委員は、親切、丁寧に話を聞いて下さいますし、社会人としてのマナーをもって臨むのであれば、自分の考えや気持ちを遠慮なく、率直にお話しいただいてもまったく問題ありません。
遺産分割調停はどのように進行してゆくのですか?
遺産分割調停は、概ね次のような流れで進んでいきます。
・相続人の確定
戸籍が事実と異なるなど相続人の範囲に問題がある場合には、人事訴訟等の手続きが必要です。また、相続人の中に認知症などで判断能力に問題がある方がいる場合には、成年後見等の手続きが必要です。
・遺産の範囲の確定
原則として、被相続人が亡くなった時点で所有していて、現在も存在するものが、遺産分割の対象となる遺産です。
遺言書や遺産分割協議書で分け方が決まっている財産は、遺産分割の対象にはなりません。誰かが遺産を隠したり、勝手につかってしまったという場合には、遺産分割以外の手続きが必要になります。
・遺産の評価
遺産分割の対象となる遺産のうち、不動産等については評価額を確認する必要があります。合意できない場合は鑑定を実施する必要があります。
・各相続人の取得分の確定
遺産の範囲・評価の確認を経て、法定相続分に基づいて、各相続人の取得額が決まります。ただし、特別受益や寄与分が認められる場合には、それらを考慮して各相続人の取得額を修正します。
・遺産の分割方法の確定
取得額に基づいて、分割方法を決めます。分割方法には、現物分割(その物を分けること)、代償分割(物を分けるが、差額を金銭で調整すること)、換価分割(売却して金銭を分配すること)などがあります。
・調停で話し合いがつかない場合どのようになるか?
遺産分割調停で話し合いがつかない場合は、「審判」という手続きに移行します。
審判とは、裁判所が当事者の方々から提出された資料や事実を調査した結果に基づいて、強制力を持った最終的な判断をする裁判手続きです。
弁護士に委任すると……
調停自体は、必ずしも弁護士が必要となる手続きではありませんが、遺産分割調停の場合、法律的な検討事項も多いため、ご本人だけでは負担が重い場合も少なくありません。また、調停申立書の作成、添付書類の収集、関連資料の提出など事務作業がやや煩雑といえます。
高木光春法律事務所では、事務作業や裁判所での手続だけではなく、依頼者の要望に沿った交渉を行い、最大利益の実現を目指します。