法律コラム/農産物の知的財産権としての重要性

先日、テレビを見ていたら、「愛媛38号」が中国で大盛況だとのニュースに接した。「愛媛38号」というのは、愛媛県が育成したカンキツのことである。

残念ながら、「愛媛38号」は品種登録されていなかったため本来門外不出のはずなのに、枝が盗まれ中国に違法に持ち込まれたようだ。中国では、四川省をはじめ河北省、湖南省、浙江省、福建省で産地化されフルーツのトップスターとして君臨しているようである。

愛媛県では、「愛媛38号」とは別物ではないかと言っているようであるが、中国で普及した人が愛媛から持ち帰ったと言っているので同じものということに疑いはないようだ。

識者が、中国のネットで見て愛媛県の農業担当者に話したところ、担当者は「初耳だ」ということで二度びっくりである。いかに、わが国の農業が知的財産権に疎いかというひとつの例である。

実はこれは一例にすぎず、「シャインマスカット」(ブドウ)や「紅ほっぺ」(イチゴ)をはじめさまざまな果樹等が中国や韓国も他国で無断栽培され、当地の名産品として扱われてしまっているのだ。ちなみに、「シャインマスカット」に至っては中国の栽培面積はわが国の50倍に達している(2020年)。あわてて品種登録しようとしても、条約で品種登録できる期間が制限されているため、もはやこれができないのである。せっかく10年以上もかけて品質の高い、収穫量に優れ、病気にも強い品種を作っても知的財産として保護されなければ努力は水の泡である。

2022年の種苗法の改正でわが国で購入した種苗を海外に持ち出すことは禁止され、農家の自家増殖は育成者の許諾が必要となったが、その実効性には疑問が呈されている。

わが国が農産物を輸出するにあったっては、いかにしてロイヤリティを確保するかが重要なポイントである。


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