借地・借家トラブル

  • 賃貸借契約書には何を記載すべきか?

    今度、不動産を借りる予定があります。契約書には何を書いたらいいですか。

    土地の賃貸借契約

    ①建物の所有を目的とするものかどうか ②建物の種類は住宅か店舗か ③期限(最低30年) ④借地権の譲渡と転貸 ⑤地代・敷金・権利金 ⑥地代の支払い方法 は最低限決めておきましょう。

    ①建物所有の目的について

    一般に、鉄筋コンクリート造など堅固な構造の方が老朽化しにくいので、賃貸人がいざ土地を利用する目的が生じた場合に利用が妨げられる場合があります。これは、賃借人の建物所有の目的にも関わりますので、どのような建物を許容するのかを検討しておく必要があります。

    ②建物の種類について

    閑静な住宅街に所有する土地を他人に貸した場合、にぎやかな店舗などを建設されては困る場合も想定されます。土地の用途については、当事者間で決めることができますので、使用目的を限定したい場合は、「居住用建物に限る」等の制限をあらかじめ定めておく必要があります。

    ③期限について

    建物所有目的の土地賃貸借契約、建物賃貸借契約では、期間が満了しても、賃借人が望めば、契約は更新されます。借地借家法の改正により、定期借地権及び定期借家権の制度ができたので、更新をしない契約をすることができます。この場合は、契約書は公正証書など書面にする必要があります(借地借家法22条、38条1項)。

    ④借地権の譲渡と転貸

    建物所有目的の借地権は、財産的価値があり、他に譲渡できます。しかし、借地権譲渡には地主の承諾あるいは裁判所の許可が必要です。予め契約の際に明示しておくと、無用のトラブルを防ぐことができるでしょう。

    ⑤地代・敷金・権利金

    賃料額については、特に明確に規定しましょう。契約更新時、更新料の支払いを求めたい場合は、その点を契約書上で明らかにしておく必要があります。更新料については法律に規定がなく、契約条項にない限りは請求が認められません。

    建物の賃貸借契約

    ①期限(1年以上―定期借家権を除く) ②用途の制限 ③譲渡転貸の禁止 ④家賃、敷金などは最低限決めておきましょう。賃貸人の権利を強化するために造作買取請求権の排除や、契約解除時の明渡遅延相当損害金額を、賃料相当額の2倍にする等の事項を盛り込む場合もあります。
    造作とは、建物に取り付けられたもので、建物をより使いやすくするものを指します。具体的には、ガラス戸、雨戸、ふすまや障子、畳、電気・ガス・水道の設備などが含まれます。借主が、貸主の同意を得て設置した造作や、貸主から買い取った造作は、借主が賃料を支払わない等の契約不履行によらずに契約が終了した場合は、借主は貸主に対して造作の買取請求をすることが可能です。
    この場合の買取価格は、問題となる造作の客観的な時価です。しかし、具体的な価額は明らかではないことから、後の紛争を防ぐために、貸主側はあらかじめ特約で買取請求権を排除しておくことができます。

    借主の賃料不払いなどで建物賃貸借契約を解除した場合には、契約解除以後の明渡遅延相当損害金の額を、賃料相当額の2倍にする等の特約を盛り込んでおくことで、借主の居座りを防いで、早期の建物明渡を実現させることができます。但し、あまりにも高額の明渡遅延相当損害金を設定すると、契約条項自体が無効と判断される場合もあるので注意しましょう(2倍程度ならば有効と判断されます)。

    せっかく契約条項を定めても無効とされる場合があるか?

    契約条項を定めても、借地借家法等の強行法規に反する規定、借地人に一方的に不利な規定は、無効とされる場合があります。
    具体的には、「賃料の支払いを1回でも遅滞したら契約解除できる」、「契約解除後は、賃貸人が建物内の物を排除して明渡を強行でき、後日、明け渡し費用を請求できる」等の規定や、法外な更新料を定める規定等は、無効とされます。
    貸主側の便宜を図るために、貸主に対して合理的な理由のない負担を課す条項は、後々紛争の元になりかねません。契約条項について不安がある場合は、事前に弁護士など専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、不動産賃貸借契約の書式の確認や、契約条項のアドバイスなどを、依頼者の事情に応じてご提供できます。土地・建物の賃貸借契約についてお困りの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 借家人が契約内容と違う目的で建物を使っているが…

    私はマンションオーナーです。マンションの一室を借りている借家人が、旅行会社の事務所として部屋を使用しています。建物賃貸借契約を解除することはできますか。

    借主(賃借人)は賃貸借契約で定められた用法にしたがって建物を使用収益すべき義務があります (民法616条、同法594条1項)。そこで、賃借人に用法違反があり、それによって賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されていると認められる場合は、賃貸借契約を解除することができます。
    信頼関係が破壊されているかどうかの判断は、会社や事務所としての使用形態、顧客など来訪者の有無や程度等、ケースバイケースで個別の具体的な事情も考慮して判断されることになります。

    契約解除は簡単にはできない。

    売買契約など、一般的な契約においては、契約違反があれば「契約不履行」として契約を解除することができます。しかし、賃貸借契約を解除する場合は、「契約不履行」に加え、「契約不履行により賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊された」という事情が必要です。
    賃貸借契約は、長期にわたる関係を前提とした信頼関係を基礎とする契約であること、解除された際の賃借人側の不利益が非常に大きいこと、と言った事情から、貸主の解除権が制限されているのです。

    用法違反をしている賃借人はどのような場合に追い出せるか?

    主(賃借人)は賃貸借契約で定められた用法にしたがって建物を使用収益すべき義務があります。賃借人が、用法に従って使用する義務に違反した場合には、以下のような効果が生じるとされています。

    • 賃貸人は、賃借人に用法違反行為を停止することを求めることができる
    • 用法違反により、賃貸人が損害を被った場合には損害賠償を請求できる
    • 用法違反を理由として、賃貸借契約を解除できる

    但し、最後の点については、軽微な用法違反に止まる場合には認められず、用法違反が信頼関係の破壊に至る場合に解除を認めると考えられています。具体的には、アパートの部屋で楽器の使用を禁止していた場合でも、1度や2度、演奏したというだけでは通常、有効に契約を解除することはできません。賃貸人が何度も注意し、隣近所に多大な迷惑が掛かっているにもかかわらず賃借人が応じないような倍位には、解除も認めると考えられます。

    他には、契約段階で認めていなかった風俗営業等を行った場合や、住宅用として賃下にもかかわらず店舗や事務所として使用した場合にも用法違反にあたり、契約を解除することができます。ただし、この場合に信頼関係の破壊に至っているかの判断は、使用形態や来訪者の有無や程度等の具体的な事情を考慮して、実質的に賃貸人に悪影響を及ぼさない場合には、信頼関係破壊が認められないとして、解除が認められない場合もあります。過去、裁判例では以下のようなケース信頼関係を破壊したものとして認められています。

    • アパートでしばしば徹夜麻雀を行い、騒音のために他の居住者の睡眠を妨げた事例(東京北簡判昭43.8.26判時538号72頁)
    • 賃貸店舗の営業態様を純喫茶から風俗喫茶に変更した事例(東京高判昭59.3.7判時1115号97頁)
    • 使用目的を飲食店として賃貸した店舗で、金融業を営んだ事例(名古屋地判昭59.9.26判タ540号234頁)
    • 2階建て住宅の一部分を賃借した賃借人が8匹ないし10匹の猫を飼育した事例(東京地判昭62.3.2判時1262号117頁)
    • 賃貸家屋が暴力団事務所として使用された事例(宇都宮地判昭62.11.27判時1272号116頁)

    賃料不払いの借主を追い出したい場合は?

    賃料不払いの賃借人に対しては、弁護士名での請求書を、内容証明郵便で送付することが有効です。その後の交渉を弁護士に委任することも可能です。
    詳しくは、「家賃滞納の回収方法」「家賃滞納者の立ち退かせ方」をご覧ください。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、賃借人の用法義務違反の程度だけでなく、性格や言い分等、依頼者のケースに応じて、最善の策をご提案することができます。賃借人のよう法違反等でお困りの際は、ぜひ一度、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 家賃滞納の回収方法

    私はマンションオーナーです。今、アパートの一室を中年の夫婦に貸していますが、既に半年分も不払いの状態となっています。立退きを求めることはできるでしょうか。

    賃貸人は、賃料を支払わない賃借人に対して、「未払い賃料の請求」、「賃料不払いによる契約解除と立ち退き請求(明渡請求)」という方法で対応することができます。賃貸借契約の場合、解約条項があっても、一度の不払いにより契約解除することはほぼ不可能です。しかし、支払いを督促したにも関わらず、概ね賃料の未払いが3か月程度続いた場合は、信頼関係が破壊されたと考えられるので、有効に契約を解除することができます。

    家賃滞納者の立ち退かせ方とは?

    建物賃貸借契約は、毎月の賃料を支払ってもらう代わりに、建物を使用させることを内容とする契約です。したがって、賃料の支払いがない以上、貸主側としては契約を解除して建物の明渡しを請求することができます。
    もっとも、明渡しによる借主側のダメージは大きいので、1か月程度の滞納でいきなり出て行ってもらうことは多くの場合不可能です。賃料を支払わない賃借人に出て行ってもらうためには、まずは未払い賃料を請求し、それでも滞納が3か月以上続くような場合に立ち退きを請求することになります。

    ①内容証明郵便を送付し、賃料の支払いを求める

    内容証明郵便とは、郵便として差し出した文書の内容を日本郵便株式会社から証明してもらう郵便方法です。内容証明郵便とは、いつ、どのような文書を、誰から誰宛に送ったかを証明できるので、請求に関する後々のトラブルを回避することができます。
    一般的には、配達証明付内容証明郵便で、「本書面到達後、○日以内に滞納賃料○○円を支払って下さい。支払いがない場合は、上記催告期間の経過をもって、本契約を当然に解除します。」と通知します。不動産の賃貸借契約のように、継続的な法律関係が続くことを前提とする契約関係の場合、契約を解除するには、軽微な契約違反があるというだけでは足りず、貸主と借主という当事者間の信頼関係が破壊されたと判断されるような事情が必要とされています(信頼関係破壊の法理)。
    そこで、家賃の滞納を理由として契約を解除する場合には、少なくとも3ヶ月以上の賃料の滞納が必要であり、その支払いを催告したのに全く支払われない等の、賃借人と賃貸人の信頼関係が破壊されているといえる事情が必要です。

    ②賃貸借契約を解除する

    内容証明郵便で督促したにもかかわらず支払いがない場合に、賃貸借契約を解除し、明渡請求をすることが可能になります。
    但し、場合によっては、一定期間内に未払い賃料を払えという催告する手続きをしなくとも、直ちに契約を解除することができる特約(無催告解除特約)が認められる場合があります。この無催告解除特約がある場合、契約の解除通知が借主に到達すると、賃貸借契約が終了することになります。
    裁判例では、無催告解除特約は当然に有効とされるわけではなく、「催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合」にのみ有効とされています。具体的には、1~2ヶ月の滞納を頻繁に繰り返すなど、賃貸人側から解除を前提としたような警告が発せられている場合に、無催告解除が認められると考えられます。

    ③建物明け渡しを請求する

    契約を解除して、賃貸借契約が終了した以上、不動産を明け渡すよう請求することが可能です。しかし、借主が素直に応じるとは限りませんし、行方不明の場合もあります。そこで、建物明渡しを求めるとともに未払賃料を支払うよう求める訴訟を提起し、建物の明渡しと未払賃料を支払えとの判決を取得することになります。あお、未払い賃料の支払や明渡条件を巡って話し合いを持つため、民事調停を申し立てる方法もあります。
    但し、実際に明渡しを求める訴訟を提起し、建物の明渡しと未払賃料の支払いを命じる判決が下されたとしても、それだけでは明渡しを強制できません。実際に明け渡しを実行するには、強制執行手続を取らなければいけません。
    強制執行の申立てには、判決が賃借人に送達されたことを証明する送達証明書と執行文を得て、建物明渡執行の申立と動産執行の申立を行います。

    仮処分の有効性

    明渡訴訟の提起にあたっては、将来の強制執行妨害を防止するため、保全措置を取っておく必要があります。具体的には、賃借人が1年以上賃料を滞納し、無事明渡しを命ずる勝訴判決を得ても、その判決に基づいて強制執行ができるのは、裁判の相手方(被告)になった賃借人に対してだけです。悪質な賃借人の場合、訴訟継続中に秘密裏に建物を第三者に転貸することにより、強制執行を免れる場合もあります。この場合、賃貸人は改めて第三者に対して明渡訴訟を提起しなければならず、二重の負担を強いられてしまいます。
    このような事態を防ぐためには、占有移転禁止の仮処分を申し立てることにより、明渡請求の相手方を賃借人に固定することが有効です。

    このように、仮処分命令は賃借人が貸主に無断で第三者に占有を移転することを防止するという事柄の性質上、原則として、賃借人からの弁明を聴かずに出されます。
    その代わりに、賃貸人は、法務局に一定程度の保証金を預けなければなりません。この保証金は、貸主が明渡訴訟に敗訴し、賃借人が仮処分により損害を被った場合の担保として要求されるもので、問題がなければ後日返還されます。保証金の具体的な金額は、個々の事情によって異なりますが、概ね賃料の1~3か月程度です。

    未払い賃料の回収

    未払い賃料の回収には、明け渡しと同時に「動産執行の申立」を行います。これにより、賃貸物件内の家財道具等を競売によって処分でき、売却代金から未払賃料を回収することが可能になります。具体的には、動産を債権者が一定期間保管し、執行官が動産類を売却して費用等を差し引いた金額を供託した後に、賃貸人は未払家賃を支払えとの判決に基づき、供託金に強制執行をして未払家賃を回収することができます。

    高木光春法律事務所のサービス

    未払い賃料の回収と明け渡し請求は、賃借人の性格や未払いの状況に応じて十分考慮する必要があります。また、仮処分は、訴訟とは別個の手続となるため、賃貸人個人ですべてを行うには相当の労力を要します。高木光春法律事務所では、供託金、弁護士費用等、依頼人の負担を考慮の上、最善の策をご提案します。まずはご相談ください。

  • 正当事由と立退き料

    所有している住宅を人に貸しています。近々、遠方に住んでいた息子夫婦が戻ってくることになったので、できれば賃貸借契約を終了させて、息子夫婦に住まわせたいと考えています。できますか。

    住宅などの賃貸借契約は、ある程度長期間にわたり継続するものであることから、賃借人の生活を保護する必要性が高いとして、契約の解除や更新の拒絶にあたっては特別な取り扱いが定められています。
    賃貸借契約を終了させるには、その旨を賃借人と合意するか、契約更新を拒絶する必要があります。建物の賃貸借の場合、更新を拒絶し、契約を終了させるためには、契約期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に契約を更新しない旨の通知をし、更に更新を拒絶する正当な事由が必要となります。いずれかでも欠ける場合には契約は自動的に更新されます。

    更新を拒絶する場合のやり方とは?

    住まいは生活の拠点であり、移転するには多額のコストがかかるため、法律は賃借人を厚く保護しています。賃貸借契約の期間が満了しても、契約は自動的に更新されてしまいます。これを法定更新と言います。
    賃貸人は、賃借人に出て行ってもらうためには、まず契約期間満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の意思表示をする必要があり、且つ、「正当事由」が備わっていなければ、更新拒絶の効力が生じません。

    「正当事由」はどんな場合に認められますか?

    正当事由が認められる場合は事情によって異なりますが、賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情や建物の賃貸借に関する従前の経過など、賃借人と賃貸人の建物に対する必要性を比べて、より必要性が高い方を優先させるというものと考えられます。具体的には次のようなものです。一般的に、賃貸人がその建物を必要とする相当な理由がある場合であっても、それだけで正当事由が認められるケースは少なく、多くの場合、正当事由を補完する立退き料の支払い等金銭の給付が求められます。

    • 賃貸人が建物を必要とする事情(賃貸人の資力等)
    • 賃借人が建物を必要とする事情(賃借人の資力等)
    • 賃貸借に関する事前の経緯(賃貸借に至った経緯、権利金、更新料等の支払いの有無・金額、滞納家賃の有無など)
    • 建物の利用状況(代替性の有無等)
    • 建物の現況(建物の老朽化の程度など)
    • 賃貸人による財産上の給付の申し出(立退料の提供)

    正当事由の判断は個別のケースの具体的な事情によって変わるため、過去の事例と同じ状況でも、認められないケースもあります。ご不明な場合は、専門家である弁護士等にご相談ください。

    立退き料とはどういうものか?

    立退き料は、明渡の正当事由を補強する事情として機能しています。そのため、正当事由の内容により金額の大小が左右されます。
    正当事由がある場合に限り、更新拒絶や解約申入れができるとされていますが、実際には「正当事由」だけでこれらが認められることは少なく、賃借人に対する金銭的給付(立退き料)がなされて初めて、更新拒絶等が認められるのが通常です。

    立退き料の相場とは?

    前述のように、立退き料の額は、個別のケースの事情によって定められるので、明確な相場や基準が存在するわけではありません。
    具体的には、立ち退いた後の転居先確保の容易さ等も考慮されるため、店舗用の建物の場合、住居用の建物に比して今後の売上げへの影響等、賃借人が受ける影響が大きいため、立退き料の額も大きくなるのが通常です。また、建物が著しく老朽化していた場合などは、立退き料は安くなるのが一般的です。
    個別の事例における適正な立退き料の額については、過去の事例を参考とすることができます。また、提示金額等によっては、その交渉方法にも工夫が必要となります。立退き料のことでお悩みであれば、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 家賃が安すぎるので高くしたい

    所有している住宅を他人に貸しています。昔からの付き合いということもあり賃料を据え置いてきたため、周りの家賃相場より随分安い賃料になっています。税金の支払いも厳しいので、値上げしたいと思っています。賃料を値上げできますか

    周囲の環境開発や、経済状況に伴う時価の上昇等で、周りの家賃相場よりも家賃が安くなった場合や固定資産税の負担が増えた場合などには、賃貸人は借家人に対して値上げ請求をすることができます。但し、賃貸人は少しでも高い家賃を望みますし、賃借人は少しでも安い家賃を望むので、利害関係が対立する立場にあることから、できるだけトラブルを回避するように値上げ交渉をすることがポイントです。

    家賃を値上げするにはどうしたらいいですか?

    原則として、賃貸借契約期間内の家賃は一定です。
    契約書に「契約期間内の値上げは無い」という条項がなければ、期間内でも値上げ請求をすることはできますが、普通は契約更新時に請求することになります。
    借家人が値上げに応じないが、どうしても家賃を上げたい場合には、簡易裁判所に家賃の値上げを求める調停を起こします。但し、民事調停法24条の2の調停前置主義により、いきなり裁判にすることはできません。
    値上げが認められる条件としては、

    • 土地建物に課せられる税金(固定資産税、都市計画税など)の負担が増えたとき
    • 周辺の家賃相場と比べ、家賃が低い場合
    • 土地建物の価格が高騰したとき
    • 契約書に「家賃の値上げをしない」という特約がないとき

    です。
    調停の際には、上記の条件を調停委員や裁判所が総合的に判断します。

  • 家賃が高すぎるので低くしてほしい

    現在、一軒家を借りています。しかし、家賃が周辺の同等の条件の物件と比較して、かなり高いのです。できれば家賃を減額してほしいと思っています。どうやって交渉したらいいでしょうか。

    実際に家賃減額が認められるかは、現在の家賃が適正な価格と考えられる賃料と比べて「不相当に高額であるか」が最も重要になります。そこで、まず、近隣の同程度の条件の賃料と比較して、家賃が高額であることが分かる資料を集めます。
    実際の交渉方法としては、まずは当事者の間で任意に話し合いを行い、それでもまとまらない場合は、民事調停を申し立てるとよいでしょう。

    賃料の減額はどんな時に認められますか?

    借地借家法では、賃貸人と賃借人との間で家賃減額の合意ができなくても、家賃の減額ができることが定められています。 そのためには、

    • 建物の借賃が、「土地・建物に対する公租公課(固定資産税・都市計画税等の税金)の増減、」「土地建物の価格低下等の経済事情の変動」「近隣の同程度の条件の建物の賃料」などの要因から総合的に判断して、不相当に高額になったこと
    • 前回の家賃改定から相当の期間が経過していること

    が必要とされています。この条件を満たすならば、契約の条件に関わらず、当事者は将来に向かって建物の借賃の増減を請求することができるとされています。つまり、賃借人からも賃料の減額を請求することができます。

    減額交渉、請求の仕方

    家賃の減額を交渉するには、賃貸人または不動産管理会社宛に、賃料を減額してほしい旨の要望を伝えます。
    家賃減額交渉は、賃貸人にとっては家賃収入の減少をもたらすものなので、経済的なメリットはありません。しかし、賃貸借契約は継続的な性質を有するので、適正な賃料額にすることで、賃借人にとってはより長期間入居することが可能となり、賃貸人にとっては安定した賃料収入が得られるという、双方の利益になることを丁寧に説明し、相手との信頼関係を害さないことが重要です。
    当事者間の話し合いがまとまらない場合は、民事調停を申し立てて、賃料の改定を求めることができます。

    高木光春法律事務所のサービス

    賃料を減額したくても、きちんとした証拠を示さずに気分だけで減額請求をしたのでは、減額請求に要する労力や費用かさみ、仮に減額できても返って不利益になる恐れもあります。高木光春法律事務所では、ビルのワンフロアの賃貸借契約の減額請求から、個人の住居の減額請求まで幅広く対応しています。依頼者の状況や希望に応じて、最善の利益をもたらすようにサポートいたします。賃料減額交渉でお悩みの方は、まず高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 家賃増額を求められたが…

    アパートを借りて住んでいます。先日、アパートの大家さんがやってきて一方的に家賃の増額を提示し、値上げした家賃でなければ受け取らないとまで言われました。突然のことで困っています。どうしたらいいですか。

    賃貸人から提案された家賃の増額に納得できないからといって放置しておくのは得策ではありません。賃借人は相当と考える賃料を供託することで、賃料不払い(債務不履行)の責任を逃れることができます。
    なお、賃貸人から賃料増額請求がなされ、裁判上これが確定した際は、増額請求の時点からの差額を支払う必要があります。

    家賃増額にどのように対処するか?

    賃貸人から提案された家賃の増額に納得できないからといって、家賃を支払わないで放置しておくと、賃料不払い(債務不履行)を理由に賃貸借契約を解除されるおそれがあります。家賃の受け取りを拒絶されたからといって、支払わないでいることは禁物です。
    この場合、賃借人としては、従前の家賃(相当と考える家賃)を法務局に供託することで、家賃を支払ったと同じ効果を得ることができます。但し、供託には、賃貸人が家賃の受領を拒絶したことが要件となるので、受領拒絶の事実を明確にしておく必要があります。

    供託はどのようすればいいか?

    供託は、家賃の支払う場所を管轄する法務局で行います。法務局に備えてある供託書に、借主(供託者)と家主(被供託者)の住所・氏名、供託金額、借家の所在地、供託する家賃が何月分であるか、供託の事由などの事項を記載します。また、供託書のほかに、法人で不動産を借りている場合は資格証明書、代理人が申請する場合は委任状など、必要書類の提出が必要です。そのうえで、従前の家賃(相当と考える賃料)を供託します。なお、供託は解決するまで供託します。

    供託すると、法務局から賃貸人に供託通知書が郵送されるので、賃貸人は家賃が供託されたことがわかります。供託を行うと、賃料を直接賃貸人に支払った場合と同様の効果が生じ、債務不履行の問題は生じません。
    賃貸人は、賃料を供託された場合に、「新賃料の一部として受け取る」という形で、還付請求することができます。その後の裁判で賃料の増額が認められた場合は、賃借人は供託した金額の不足分に年1割の金利を支払うことになります

    高木光春法律事務所のサービス

    供託は、個人で法務局に出向いて手続きをすることも可能です。しかし、供託事由の説明や、供託金額の妥当性などの判断には、専門家のアドバイスが役に立つことも少なくありません。また、当事者間で話しあいがまとまらなかった場合に備えて民事調停や裁判に備えておく必要性もあります。高木光春法律事務所では、依頼者の個別の事情に応じて、供託やその後の調停・裁判まで、幅広いサポートを行っています。賃料増額でお困りの際は、高木光春法律事務所までご相談ください。

  • 賃借建物の修繕は誰がやるか?

    一軒家を借りました。ところが、元からついていたドアが壊れていて鍵を書けることができません。防犯上、すぐに修繕したいのですが、このような場合、誰が修繕するのですか。

    建物など不動産の賃貸人には、賃借人が問題なくその不動産を使用するために必要な修理をする義務があると、民法で定められています。そこで、一軒家を借りたけれどドアが壊れて鍵がかけられない等の場合においては、原則として、賃貸人が修繕することになります。賃貸人が修繕をしない場合は、賃借人自身がこれを行い、要した費用を「必要費」ないし「有益費」として請求することも可能です。

    賃貸人の修繕義務の内容

    不動産の貸主には、借主が支障なく部屋を使用するために必要な修理をする義務があります。この点、民法では、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められています(606条1項)。
    具体的な修繕のケースとしては、天井から雨漏りがする、ドアに鍵がかからない、給湯器が壊れるなど電気・ガス・水道の設備が使えない等の場合がありあます。
    このような場合、原則として、賃借人は賃貸人に修理を請求できますが、賃貸人が応じてくれない場合には、賃借人自らが修理をして、その費用を家主に請求することも可能です。
    借りている物件を、使用に適した状態に維持・保存するための費用を「必要費」といいますが、賃貸人はこの必要費をすぐに賃借人に返さなければならないと民法で定められています。なお、借主が支払った費用を家賃から差し引くといった対応をとることも可能です。

    但し、全てのケースで修繕をしなければならないわけではありません。破損・故障等により、賃貸借契約の利用ができなかったり、著しく支障が生じる場合にのみ、修繕義務が生じるとされています。従って、水道のパッキングのすべりや障子の張り替えなどの修繕は借家人の側に修繕義務があるとされています。また、賃借人自身が損壊した場合は、賃貸人は修繕する義務はないといえるでしょう。

    修繕義務を借家人に負わせる特約の効力

    賃貸借契約の中に、「修理費用は借主の負担とする。」という特約が定められている場合には、このような特約も原則として有効とされています。このような場合には、賃借人が修繕費用を負担しなければなりません。
    但し、この特約は、通常予想される修繕だけに留まると考えられます。具体的には、地震や水害等で建物を修繕する必要が生じたときは、賃貸人が修繕すべきと考えられています。家賃は通常の金額、またはそれより高額に設定しているのに、大規模な修繕費用を賃借人の負担とする特約が付されている場合等は、そのような契約自体が無効とされる可能性があります。

    高木光春法律事務所のサービス

    賃貸借不動産の修繕が必要な場合は、ケースによって様々です。賃料や具体的な修繕箇所・状況等に応じて、検討する必要があります。高木光春法律事務所では、依頼者の個別の事情に応じて、賃貸借契約のトラブルに幅広く対応しています。賃借不動産の修繕など、不動産トラブルでお困りの際は、高木光春法律事務所までご相談ください。

  • 借地権の売買

    土地を借りて、その上に住居を構えて住んでいます。この建物をほかの人に譲って、引っ越しをしたいと考えています。自由に譲ることはできますか。

    借地上の建物を他人に譲る場合、建物と土地の使用権(借地権)を切り離して譲渡することはできません。そのため、地主に無断で土地の利用者を変更することには問題があります。法律上、無断で賃借権を譲渡したり土地を転貸したりすると、地主である賃貸人は契約を解除できると定められています。

    借地権は自由に売却することができるか?

    借地人は、賃貸人の承諾を得なければ、借地権を売却したり、賃貸物を転貸することはできないと民法で規定されています。これに違反すると、賃貸人に賃貸借契約を解除される恐れがあります。
    これは、借地関係は非常に長期にわたることが通常なので、当事者間の信頼関係が非常に重要な要素になるからです。賃貸人側から見ると、信用できると思って貸した相手が、いつの間にか見ず知らずの資力のなさそうな人物に賃借権を譲られると、借地料の回収等に困る事態に陥る危険もあります。

    賃貸人が承諾しないと借地権は譲渡できないのか?

    賃貸借契約の際に、自由に賃借権を譲渡できる旨を定めていた場合は、承諾は必要ありません。その場合は、一般的に、契約時に多額の「権利金」が授受されることが多いようです。
    また、建物を売却する等、借地権を譲渡したいのに、賃貸人に拒否された場合、借地人の変更が賃貸人の不利にならないのであれば、裁判所に、「地主の承諾に代わる許可」を求めることで、借地権の譲渡をすることが可能です(「借地非訟手続」と言います)。なお、「借地非訟手続」を利用できるのは、「借地」の場合のみであり、「借家」の場合は利用できません。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、借地権を巡るトラブルについて、賃借人の方の代理人として交渉を行ったり、借地非訟手続の申し立てをするなど、借地権譲渡の目的を達成するために幅広いサポートをご提供しています。借地権のことでお悩みの際は、ぜひ一度、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 借地上の建物の建替え・増改築

    土地を借りて住居を構え、長年生活してきました。しかし、建物が随分古くなったので、建て替えか、増改築を検討しています。どのような手続きが必要ですか。

    自分の建物を建て替えるのは自由なのが原則ですが、地主との契約内容に抵触する場合は一定の制限を受けます。通常、借地契約の場合、契約上、建替え・増改築には賃貸人の承諾を要するということが、契約内容に記されています。その場合、賃貸人の承諾を得るため、交渉を行う必要があります。

    地主の承諾は必要か?

    借地契約には、「賃借人は、賃貸人の承諾なしに増改築をしてはならない」という条項が定められているのが一般的です。なぜなら、賃貸人側から見ると、賃借人が自由に建替えや増改築を行うと、それだけ賃貸人自身による土地利用が妨げられ、借地権を強固なものとしてしまうからです。
    とはいえ、建物は老朽化するものですし、年月の経過により家族構成の変化などから、建物の間取りや仕様を変更しなければならない場合もあり得ます。にもかかわらず、一切、借地上の建物だからと言って、建替えや増改築ができないとすると、賃借人側は大きな不利益を被ることになります。
    そこで、賃借人側と賃借人側のバランスを図るために、賃借人側が承諾料の支払いを提示し、賃貸人との間で合意のうえで、建替えや増改築を行うのが通常です。

    地主の承諾が得られない場合の対処方法

    賃借人が建替えや増改築をしたいのに、賃貸人が拒否する場合、裁判所に、「地主の承諾に代わる許可」を求める、「借地非訟手続」という制度を利用することができます。借地非訟手続の申立ては、増改築を始める前に、増改築の種類や規模、新しい増改築の構造、使用の目的、借地権の対象土地、現存する建物などを添付して行います。
    申立がなされると、裁判所は、種々の事情を考慮して、申立が相当と認めるときは、「地主の承諾に代わる許可」を賃借人に与えます。
    但し、その際は、承諾料に代わるものとして、賃貸人に対する一定額の金銭の支払いが命じられるのが通常です。

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    高木光春法律事務所では、借地上の建物の増改築でお困りの方のために、賃借人の方の代理人として交渉を行ったり、借地非訟手続の申し立てを行うなど、依頼者の最善になるようなサポートを行っています。借地の賃貸人との交渉が難航している場合などは、ぜひ一度、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 名義書換料(承諾料)について聞きたい

    土地を借りて家を構えていますが、ずいぶん老朽化してきたので、更地にして新たな家を建て、借地権付きでほかの人に売却することにしました。地主に相談したところ、「名義書換料」と引き換えに建替えと借地権譲渡を承諾するといわれました。名義書換料とはなんですか。名義書換料を払わなければ絶対に増改築はできないのでしょうか。また、名義書換料の相場はどのくらいですか。

    通常、借地契約では、借地権の譲渡や建物の新築・増改築をする際には、地主である賃貸人の承諾が必要とされています。名義書換料とは、その承諾の代価として支払うものをいい、一般的な慣習といえます。
    なお、賃貸人が承諾しない場合、裁判所に対し、「承諾に代わる許可」を求めることができます。

    なぜ名義書換料の授受がなされるのか?

    法律上、賃貸借契約においては、無断で賃借権の譲渡や転貸は禁止され、別途契約で、無断で建物の増改築をすることは禁止されているのが一般的です。これは、賃貸借契約は通常長期にわたることが想定されているため、賃貸人側から見ると、建物の増改築により契約終了が遅くなり、自身で土地を活用できなくなることを意味するからです。また、信頼関係を有しない第三者に借地権が譲渡されたり、増改築がなされたりすると、借地管理に支障を来す恐れも否定できません。
    但し、賃貸人側にとっては、増改築や賃借権譲渡がなされても、それに見合うメリットがあれば、借地権の譲渡等を認めても問題ありません。名義書換料は、このような借地権の性質から交付されるものと言えます。

    名義書換料の相場とは?

    名義書換料の「相場」は、地域や諸般の事情によって変わりますが、概ね以下のように言われています。最終的には、当事者間の話し合いによって決められます。

    種類 内容 相場
    賃貸借譲渡、
    転貸承諾料
    賃借人が、賃借人としての地位(賃借権)を第三者に譲渡したり、自分は賃借人の地位に留まったまま第三者に転貸する際に授受されるもの。 借地権価格の10%程度。
    借地権割合は、路線価図に記載がある。
    建替え、
    増改築承諾料
    借地上の建物の建替え・増改築時に授受されるもの。 更地価格の3%程度。具体的な料率は、従前の建物と新建物との間に、規模、用途、構造、床面積等につき変更があるか、増改築の場合はその規模等に応じて、決められる。
    借地権の
    条件変更承諾料
    例えば木造建物(非堅固建物)から鉄筋コンクリートの建物(堅固建物)に変更する場合など、借地条件を変更する場合に授受されるもの。 更地価格の10%程度。

    賃貸人が借地権の売買を承諾してくれない場合の対処方法

    借地県の譲渡等を賃貸人が承諾してくれない場合は、賃借人は、裁判所に対し、「代諾許可」(借地権設定者の承諾に代わる許可)を求めることができます。裁判所は、賃借人からの申立てを受け、賃貸人と賃借人の双方から事情をきき、賃借人の申立が相当と認めるときは、借地権譲渡等の許可を与えます。
    このとき、裁判所は、賃貸人側にも配慮し、承諾料に相当する金銭の支払いと引き換えに、賃借権譲渡や建替え・増改築等を許可します。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、借地権の譲渡等でお困りの方のために、賃借人の代理人として交渉を行ったり、借地非訟手続を申し立てて借地権譲渡をはじめ、依頼者の事情や要望に応じて最善の利益に資するようなサポートを行っています。借地権を巡って賃貸人との交渉が難航している場合などは、まずは高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 更新料の支払義務はあるのか?

    30年の借地契約期間が満了しました。地主から借地契約を更新するなら、更新料を払えと言われています。地代もきちんと払っているのに、更新料も支払わなければいけませんか。

    更新料とは、借地期間が満了したときに、その契約の更新に際して、借地人から地主に支払われる一時金のことをいいます。
    更新料の法律上の支払義務はありません。借地契約で、更新料についての定めがなければ、地主から請求されても支払う必要はありません。更新料が、相当といえる金額であれば、更新料の支払いに応じて、合意による更新契約を締結するのが一般的ですが、更新料が不当に高額な場合は交渉の余地があるでしょう。

    更新料はどういう性質のものか?

    更新料の性質については、一般的には、不足賃料の一括前払いや、更新拒絶しないことについての対価などと言われます。
    慣習として地主が更新料を請求することも少なくありませんが、借地契約の期間が満了しても、建物が存続している限り、地主に正当な事由がなければ借地契約は同一条件で法定更新されるので、更新料を支払わなければ借地契約が更新されずに終了するということはありません。
    判例では、地主の請求があれば当然に更新料支払義務が生ずる慣習法は存在しない、と判断されていますし(最判昭和51.10.1)、借地契約の内容に更新料の支払いが含まれている場合でも、その金額が法外なものであれば無効となることもあります。
    したがって、更新料支払の合意がないときは、地主から請求されても借地人に更新料支払の義務が生じるわけではありません。但し、更新料支払の合意をしたときは、その金額が法外なものでない限り、支払合意は有効と考えられています。

    なお、更新料の金額・相場は、借地契約で、具体的な金額や算定方法が決まっていれば、それに従います。ただし、賃借人に一方的に不利な内容であれば、無効となる可能性があります。「当事者双方の協議に基づき金額を決める」等の約定がある場合は、協議により決定しますが、更地価格の3~5%が一般的です。

    地主から更新料を請求された場合の対処方法

    地主である賃貸人から一方的に更新料の支払いを求められても、支払う必要はありません。まずは、借地権の契約に、更新料に関する特約があるかを確認することが第一です。仮に特約がなくとも、支払を一切拒絶することが常に適切とはいえません。賃貸人との関係は長期にわたり続くので、賃貸人との協議の中で、円満な更新のために合意を図ることも重要です。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、更新料に関するトラブルについても対応しています。更新料に関するトラブルは、賃貸人と賃借人の関係を悪化させがちです。当事者だけの話し合いによらず、間に弁護士が入ることでスムーズに合意に至ることが期待できます。更新料を巡るトラブルでお困りの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 借地契約終了時の建物買取請求権

    借地上に家を構え、生活してきましたが、この度借地契約が満了することになりました。家族も増えたので、これを機会に借地契約を終了させたいと思っています。家はまだ十分使えるので、地主さんに買い取ってもらうことはできるでしょうか。

    建物買取請求とは、借地契約が借地人による契約不履行以外の理由で終了した場合に、賃借人が賃貸人に対し建物を買い取ってもらうことをいいます。
    造作買取請求とは、賃貸借契約の期間中に、賃借人が建物等の賃借物に取り付けたもの(造作)を、賃貸人に買い取ってもらうことをいいます。

    借地契約が終了した場合、賃借人は借地を現状に戻して返還しなければならないのが原則です。しかし、この原則に基づいて土地上の建物を取り壊して返還しなければならないとすると、契約終了と同時にまだ使える建物を取り壊さなければならず、賃借人にとっても社会経済的にも大きな損失となります。他方で、賃貸人が、建物を無料で利用できるとすると、賃貸人に合理的な理由のない利益を受けさせることになります。
    そこで、借地借家法では、借地契約に基づいて建物が建築された場合で、借地契約が更新されず終了する場合に、賃借人からの請求により、建物を時価で地主に買い取らせて建物を存続させることで、利益のバランスを図ろうとしています。
    建物買取請求権は、特約により排除することができない、賃借人の利益を守るための強力な権利といえます。
    なお、具体的には、賃借人が建物買取請求権を行使した時点で、賃貸人との間で建物の売買契約が成立することになります。

    建物買取請求権における「時価」とは?

    建物買取請求権における「時価」とは、建物が現存するままの状態における価格のことをいいます。建物を取り壊した場合の動産としての価格ではありません。また、敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌すべきとされています(最高裁昭和35年12月20日判決)。

    借家人の造作買取請求権とは何ですか?

    造作とは、借家人が建物に取り付けたもので、建物をより使いやすくするものをいいます。具体的には、畳、ガラス戸、雨戸、ふすま、障子、電気・ガス・水道の設備、飾戸棚などがあります。エアコンなど取り外しができるものは含まれません。
    賃貸人の同意を得て取り付けた造作の場合は、賃借人の契約不履行以外の理由で契約が終了した後、賃借人は賃貸人に対して買取を請求することができます。買取価格は、その造作の客観的な時価ということになります。
    但し、造作買取請求権は特約により排除することができます。賃借人側の立場にある方は、契約書を最初によく確認しておくことをお勧めします。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、建物買取請求・造作買取請求更新料に関するトラブルについても対応しています。これらの買取り請求は、当初の契約と併せて、適正な時価を算定して請求する必要があります。建物・造作買取請求でお困りの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 敷金・礼金・保証金とは

    マンションを借りることになったのですが、礼金と敷金がかかります。そもそも、礼金や敷金とはなんですか。

    敷金とは

    敷金とは、賃料の支払いが滞った場合や、借りた家を返すときに修繕費用が必要になる場合に備えて、貸主に預けるお金のことをいいます。
    賃貸借契約が終了し、家などを貸主に返したときに余ったお金があれば、貸主から借主に返してもらうことになります。家を明け渡す際に敷金で支払うことが必要となる修繕費用の範囲については、賃貸借契約書ではっきりさせておくことが必要です。
    実務上は、賃借人が負う原状回復義務の範囲に関して生じるトラブルを防ぎ、紛争を解決するために、国土交通省が策定・公表した原状回復に関するガイドラインを尊重して、原状回復義務の範囲が判断されます。

    礼金とはなんですか?

    礼金とは、家を貸してもらうお礼として、賃借人から賃貸人に支払うお金のことをいいます。お礼のお金ですから、礼金は、返ってくることが予定されていません。戦後の住宅不足の際、立場の弱い賃借人が家を貸してもらうお礼として賃貸人に支払った金銭の名残ですが、住宅過剰の今日では、礼金0円を謳う賃貸建物も多くなっています。礼金の相場は、建物の性質等によりますが、概ね賃料1、2か月分と考えておくとよいでしょう。

    保証金とはなんですか?

    保証金とは、「建設協力金」などと称して授受されることもあり、敷金と礼金を兼ねたお金ということができます。賃貸借契約期間中に、賃料の不払い、賃借物の損壊など、賃借人に債務不履行があった場合に備えて賃貸人に預けるお金として、敷金と同様の機能を果たしますが、同時にお礼金としての側面も持ちます。したがって、契約終了時に礼金部分は返ってきませんが、敷金部分は家を明け渡した際に残額があれば戻ってことがあります。
    保証金については、償却の定めがあったり、返還時期について特別の定めを置く場合があります。

    保証金が使われる場合とは?

    近年、事業用の建物を中心に、敷金ではなく、保証金として一定の金銭を賃貸人に預けるケースが増加しています。
    保証金は、「建設協力金」などと称して授受されることがありますが、「建設協力金」とは、地主がビルを建設する際に、その建設資金の一部をテナントから借りて建設資金に充てる際の金銭のことをいいます。そのため、建設協力金としての保証金は、担保というよりは借入金に近い性質を有していますが、金利の定めなく授受されることも多く、賃貸人側から見ると有利に利用することができます。
    また、このような性質の保証金の返済期限は、敷金のような「明渡時」ではなく、「10年」等と期限を定め、支払方法も長期の分割払いとするケースが少なくありません。

    保証金の場合、敷金との最大の違いは、賃貸人が変わった場合です。敷金の場合は、賃貸人が変わっても、賃借人は明渡後、新賃貸人に対して敷金の返還を求めることができます。他方、建設協力金としての保証金の場合は、実質的には貸金なので、賃貸人が変わった場合でも、旧賃貸人に対して返還を求めなければなりません。
    このように、敷金と保証金には、機能や性質に大きな相違点があります。

    保証金の「償却」とは?

    保証金の場合、契約更新時や契約終了時に、何割かを「償却する」と定められることがあります。ここで言う「償却」とは「将来的に返さなくてもよい」という意味です。よほど賃借人に不利な条件でなければ、このような特約も有効なものとして取り扱われます。

    高木光春法律事務所のサービス

    高木光春法律事務所では、敷金・礼金・保証金に関するトラブルについても対応しています。これらの制度は、賃貸借契約の目的(住居用かビルなどの業務用か)や、地域的な慣習によっても異なる場合があります。不動産賃貸借に関して、敷金・礼金・保証金などのトラブルでお困りの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 敷金を返してもらいたい

    アパートの一室を借りていましたが、このたび退去することになりました。しかし、大家さんが、原状回復に費用がかかるなどといって敷金を返してくれません。敷金を返してもらうにはどうしたらいいですか。

    敷金とは、賃貸借契約で、賃借人が家賃を滞納したり、故意や過失で損害が生じたときに備えて、賃貸人が預かるお金のことを言います。このような性質から、原則として、家賃の不払いや損害等の債務がなければ、退居の際に全額が返還されます。
    明け渡しの際に大家(賃貸人)が敷金を返してくれない場合は、まず、賃貸人から、敷金から控除したとする原状回復費用の明細を取り寄せましょう。そして、それらの費目が、敷金から控除できるものかを国土交通省のガイドラインから確認し、その上で文書等により敷金の返還を請求することになります。

    敷金から差し引かれる補修費用等にはどのようなものがあるか?

    敷金は、賃料の不払いや、明け渡し時に修繕費用が必要になる場合に備えて、貸主に預けるお金で、保証金の一種です。建物明渡時に残額があれば返還されます。
    このように、敷金は「賃借人の債務不履行を担保するもの」なので、通常の使用方法による汚れや軽微な破損(自然損耗等)については、月々支払っている賃料により賄われていると考えられるので、賃借人が別途負担する必要はありません。
    但し、賃借人が負う原状回復義務の範囲に関してトラブルが生じるケースは非常に多いのが実情です。そのため、実務では、国土交通省が原状回復に関するガイドラインを策定、公表しています。
    このガイドラインには法的拘束力がありませんが、裁判所も基本的にはこのガイドラインを尊重しながら原状回復義務の範囲を定め判断しています。
    具体的には、壁紙の張り替え費用などは賃借人が負担する必要はありません。

    敷金を返還してもらうための方法

    ガイドラインに基づいて、返還を強く求めても埒が明かない場合は、まず内容証明郵便により返還を求めるのが一般的です。以下に、敷金返還請求する場合のひな型を参考にあげておきます。

    敷金返還請求書の文例

    敷金返還請求書

    私は、平成〇〇年〇月〇日に下記物件について貴殿との間で賃貸借契約書を締結しました。この契約は、平成○○年○月○日限りで終了し、同建物の明け渡しも既に完了しました。ついては、本契約に基づき、貴殿に預けている敷金の○〇円を本状到着後○日以内に返還してください。
    ( 私名義〇〇銀行〇〇支店普通口座× × × × × × へ、振り込んでください。)_
    「原状回復をめぐるガイドライン」では、家賃滞納や故意・過失による汚損・毀損を除いて敷金は返還することになっています。
    なお、同日までに振り込みがない場合は、法的手続きを考えます。

    物件の表示
    ○ ○ 市○ ○ 町○ 丁目○ 番○ ○ 号
    ○ ○ ○ マンション○ ○ ○ 号室
    平成〇〇年〇〇月〇〇日
    通知人 〇〇市〇〇町〇丁目○ 番○ ○ 号
    氏名○ ○ ○ ○ 印
    披通知人 〇〇市〇〇町〇丁目○ 番○ ○ 号
    ○ ○ ○ ○ 殿

    この請求書は、本人名義の文書でも構いませんが、弁護士名で送付した方が、後日の裁判沙汰を警戒して、相手方が任意に支払う可能性が高まります。請求書を送付してもなお返還に応じない場合は、費用や心理的負担を勘案して、少額訴訟か、民事調停の申立てを検討するとよいでしょう。

    高木光春法律事務所のサービス

    賃貸人側が敷金の返還請求に応じないケースや、必要以上に敷金から支払がされるケースは残念ながら少なくありません。このような場合には、弁護士が代理人として間にはいることで、賃貸人側が裁判沙汰に発展することを恐れて支払いに応じる場合もあります。弁護士費用や時間的労力など、依頼者の事情やご要望に応じた最善の解決方法をご提案いたしますので、お悩みの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 建物を退去するときの原状回復の義務

    マンションを借りていましたが、先日、賃貸借契約が終了しました。賃貸人から原状回復を求められており、天井や壁紙の張り替えも求められていて、やらない場合は、賃貸人が自分でやって敷金から差し引くといわれています。原状回復はどの程度する必要があるのですか。

    賃貸借契約は、一定の対価で一定期間目的物を貸与する契約なので、賃借人は、借りたマンションなどの目的物を保管する義務とともに、契約終了時に借りた時と同じ使用収益状態で返還する義務があります。
    但し、原状回復とは、借りた当時の状態まで戻すことまでは含まれず、通常のしように伴う汚損や損耗等は、賃借人が回復する必要はありません。

    原状回復の内容とは?

    実務では、賃借人が負う原状回復義務の範囲に関して生じるトラブルが多いことから、国土交通省が策定した原状回復に関するガイドラインを尊重して原状回復義務の範囲が定められています。このガイドラインによると、賃借人が負担しなければならない原状回復とは、「賃借人の居住、使用により発生した建物の価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること」とされています。
    つまり、通常の使用に伴う汚損や自然損耗等の修繕は、賃借人の原状回復義務には含まれません。具体的には、賃貸人から、天井や壁紙の張り替え、畳の表替え、床の張り替え等を求められても、基本的には賃借人はこれに応じる必要はありません。
    但し、賃借人側の故意や過失による汚損や、通常の使用とはいえない用法による汚損は、原則としてその修繕費用を敷金から控除できるとされています。敷金が、このような理由で修繕に充てられた場合は、敷金の返還は請求できません。

    敷金から原状回復費用を差し引かれてしまったときの対処方法

    敷金から原状回復費用を控除された場合は、その費用が賃借人の原状回復義務の範囲に含まれるか否かを確認することが大切です。
    もし、義務に含まれないものなのに、敷金から控除していた場合は、文書により返還を請求します。これに応じない場合は、民事調停や少額訴訟等の申立てを検討します。返還請求額が少額で、労力や費用をかけたくない場合もあると思いますが、賃貸人も同様なので、スムーズに返還を受けられる場合もあります。

    高木光春法律事務所のサービス

    賃貸人の中には、原状回復に要する費用は敷金からすべて充当し、尚且つ『不足分を賃借人に請求できると考えている人も少なくありません。そのため、賃借人が正当に権利を行使して敷金の返還を請求するのは難しい場合もあるでしょう。そのような場合に専門家である弁護士が間に入ることで、円滑な解決を目指すことができます。依頼者の事情やご要望に応じた最善の解決方法をご提案いたしますので、原状回復や敷金の返還でお悩みの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

  • 借地・借家に関する紛争の弁護士費用

    法律相談料

    初回30分 無料
    以降30分ごとに 5,000円+税

    書面作成料

    1通 30,000円~50,000円+税

    内容証明や、訴状、答弁書などの書面作成のご依頼をお受けした場合の弁護士費用です。
    法律相談の結果、書面作成のご依頼をお受けする場合、法律相談料は別途いただきません。
    書面作成の後、事件のご依頼をお受けした場合(例:答弁書の作成のみを依頼したが、その後、代理業務を依頼することになった場合等)、受任事件の着手金は、書面作成料を差し引いた額とさせていただきます。

    借地借家紛争の依頼

    明渡請求事件(消費税別)

    着手金 報酬金
    交渉、調停 200,000円~ 200,000円~
    裁判 300,000円~ 協議による

    明渡を求める場合(貸主側)も、求められている場合(借主側)も、上記の表によります。
    事案の難易、予想される事務量・解決までにかかる時間等を考慮し、適正妥当な範囲の費用をご提案いたします。
    交渉・調停に引き続き、裁判を受任する場合、別途着手金をいただくのではなく、差額分(100,000円+税~)を追加でお支払いいただく形になります。ご依頼の範囲(交渉、調停、裁判)や、報酬金の発生条件については、契約時に十分な協議を行い、明示いたします。

    金銭請求に関する依頼(消費税別)

    経済的利益の額 着手金 報酬金
    300万円以下 8% 16%
    300万円を超え、3000万円以下 5% +9万円 10% +18万円
    3000万円を超え、3億円以下 3% +69万円 6% +138万円
    3億円を超える 2% +369万円 4% +738万円

    承諾料、更新料についての依頼(消費税別)

    着手金 報酬金
    交渉、調停 200,000円~ 原則として、次のとおりとし、事案に応じて協議により調整。
    経済的利益の額
    300万円以下          16%
    300万円を超え3000万円以下   10% +18万円
    3000万円を超え3億円以下    6% +138万円
    3億円を超える。         4% +738万円
    裁判 300,000円~

    承諾料、更新料の支払を求める場合(貸主側)も、求められている場合(借主側)も、上記の表によります。
    着手金については、事案の難易、予想される事務量・解決までにかかる時間等を考慮し、適正妥当な範囲の費用をご提案いたします。
    交渉・調停に引き続き、裁判を受任する場合、別途着手金をいただくのではなく、差額分(100,000円+税~)を追加でお支払いいただく形になります。ご依頼の範囲(交渉、調停、裁判)や、報酬金の発生条件については、契約時に十分な協議を行い、明示いたします。
    「経済的利益」とは、貸主側の場合、現に支払いを受けた金額、借主側の場合、弁護士の代理交渉により減額できたと考えられる金額をいいます。

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