弁護士ブログ/AIと裁判

5月16日にNHKBSで午後9時から放映された「有罪、とAIは告げた」を見た。

高校生の16歳の少年(被告人)が実の父親を刺し殺したという殺人の罪で刑事裁判(裁判員裁判)を受けるというもので、主として、定年間際の裁判長と左陪席の若手女性裁判官にスポットがあてられる。

被告人は、裁判の初めから罪を認めており、なぜ罪を犯したのかを巡って被告人質問が始まる。被告人は、第1回目の裁判期日では、成績至上主義者の父親に対し、「あんな奴(父親)殺されて当然」と言い放つ。

裁判長は、これまで、厳罰主義を貫いてきた人物で、何の反省もない被告人は、少年であっても厳罰相当と考えているが、死刑にするには原則的に被害者が二人以上という判例上の縛りがあることから悩み、AIにどのような判決が妥当か相談する。

さて、AIの結論はというと、「死刑相当」という結論になる。裁判長は安堵し、若手裁判官にAIの話をすると、さすがに驚く。

2回目の裁判期日では、弁護人の質問に対し、被告人は一転して前の供述を翻し、父親に殴られ殺されそうになったので逆に刃物で反撃したと述べるが、「取り調べではそんなこと言っていない」と検事から一蹴される。

被告人を事件直後撮影した写真(鑑定書)には被告人の足に「根性焼き」が認められ、父親の被告人に対する虐待が徐々に明らかになる。

若手裁判官は、祖母が著名で、女性裁判官の草分け的な存在であるという設定で、悩んだ挙句、AI で祖母を呼び出してもらい、判決の意見を聞く。祖母は、「自分の気持ちに従って判決を出せばよい」と諭す。

実は、AI は、インプットされた情報により、その者の気に入るような解答をする、迎合する可能性があることが知られている。米国では、AIに悩みを相談した未成年者が自殺したケースで、AIの制作会社は遺族から損害賠償の訴訟を起こされているようである。

裁判官が、厳罰主義者で、自分の考えに近い裁判例がデータとして入力され、何らかの形でその価値観が反映されると、AIは忠実にその考え方に沿った判決を出す可能性がある。

そもそも、人間が行った犯罪について、人間関係、生い立ち、置かれていた状況、性格その他さまざまな事由を考慮して公平な判断がAIにできるのか、判決も、色々な社会的地位にあり、様々な経験を有する人(裁判官、裁判員)が話し合い、議論することによって出た結論であるからこそ公平性が担保されるという前提で裁判員制度が設けられたのではないか。米国に「12人の怒れる者たち」という法廷ドラマがあるが、正に判断者の話し合いの重要性を訴えている。

このように考えると、将来的にAI の精度が人間を超える「シンギュラリティ」の段階になったとしても、人間は人間の手で裁かれなくてはならないのではないか。

本テレビドラマでは、若手裁判官からのAI 裁判の上記の問題提起で終了となっている。

なお、このドラマでは、実は被告人は真犯人ではなく、真犯人の弟を庇うために虚偽の自白をしたというオチがついているが、この点にあまり興味はない。

 


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