老後の備えを考える

少子高齢化のこの時代、安らかな最期を迎えるために何をしておくべきなのか、老後や相続、親、墓、葬式など様々な観点から考えてみましょう。

1 老後

単身世帯が増えつつある昨今、墓の承継は容易ではない。人に迷惑をかけずに埋葬してもらうには生前に業者と委任契約するなどの準備が必要です。
誰だって安らかな最期を迎えたい。そのためには、日頃からかかりつけの医師、看護師、介護福祉士などを探しておきたいものです。
誰にも迷惑をかけずにひっそりと死ぬということはかなり難しい。特に死後何日も経って発見されるなんてことは避けたいものです。施設や病院に入っていればまだしも、一人暮らしで近所づきあいもない人は、自治体の緊急通報システムを利用するなどの手当が必要です。
最近話題のコーヒーを飲みながら知り合いと「死」を語り合う「デスカフェ」なんてちょっと気がきいているかも知れません。

2 相続

相続問題というと、親の遺した財産を子供達がむしり取り合う醜い争いごとをイメージするのではないでしょうか。確かに我々弁護士は、依頼されれば仕事として依頼者のために訴訟や調停をやることになるわけですが、できることなら、円満にウィン・ウィンの関係で親の財産を分配したいものですね。
そのためには、相続分はどうなっているのか、遺言書はどういうものでどう作ればいいのか、家族信託は使えないのか、成年後見制度ってどういうものか、相続税の内容は、事業承継のやり方はどうすればいいのかなど一般的な法的素養はある程度持っていなければなりません。一般的な素養で解決できないところを解決するのがプロである我々弁護士の仕事なのです。

3 親の扱い

遠く離れた実家に年老いた母親が一人暮らし、認知で身の周りのこともできない。 亡くなって実家に戻ったら、固定資産税は滞納、訪問販売に手を出し借金が何千万円、家もゴミ屋敷に。こんなことを想像してみてください。母への不義理を後悔するばかりか、実家も失い自分の将来も真っ暗。こういった事態は避けたいものです。
夫とともに夫の高齢の父親の面倒をみてきたが、夫が急死。夫の二人の姉妹から執拗に義父の面倒をみるよう指示。あまりにも身勝手だと思ったら、姻族関係の解消も検討してみましょう。

4 墓、葬式

核家族化で先祖供養への意識が薄れる中、本当に墓を承継したり、建立したりする必要があるのでしょうか。墓じまいしようとすると、檀家制度を盾に高額な「離檀料」を請求されるケースもあるようです。
葬儀社が病院と契約していて高額な葬儀料を請求されるケースもあると聞きます。葬式や墓建立については明細を確認し、遠慮せず「見える可」を進める必要があるのではないでしょうか。

5 ここまでのまとめ

相続は人生のほんのひとコマです。人生のある時期からは、将来というか、死を見つめて生活設計をしましょう。常日頃から親族間の信頼関係の構築に努める。親の介護の負担も計画的に考える。墓や葬儀のことも意識する。
目先のことにとらわれず、広い視野を持ってしきたりとか慣習を今一度見直しつつ、人生を送ることが大切だと思います。

6 弁護士に依頼する意味

これまで、いわばあるべき老後の備えを話してきましたが、現実は、そううまくはいきません。
相続ひとつとってみても、 親に対する考え方の違い、子の価値観や置かれている生活環境の違い、配偶者の影響など様々な要素で揉め事が生じます。そして、人間として捨て去ることのできない欲望と感情が絡みます。親を引き取っている子は扶養の負担を強調し別世帯で暮らす子は法律で認められた相続分や遺留分を主張します。また、家系を重視する子は血のつながりのない配偶者の親族に遺産が渡ることを嫌うかもしれません。その結果として、どうしても納得できない、しかし、話し合いでは解決できない場合に法律が登場します。ここで誤解していただきたくないのは、法律は、価値観や欲望や感情を実現するツールではないということです。
客観的にみて公平とは言えない、平等に反する事態を解消し、「社会正義」を実現するのが法の目的なのです。普通は、相手方の欲望や感情が過剰なことが多いので、公平・平等の観点からこれを是正し解決を図ることになりますが、依頼者の欲望や感情が強すぎ公平を害すると判断すれば弁護士は依頼者を説得し公平を実現することもあります。
いざ 紛争になってしまえば、決して安くない費用と時間をかけて弁護士に依頼することになりますし、多くの非生産的なエネルギーを費やし、ストレスも大きくなりますから、日頃から欲望や感情をひとまず横に置いて、公平な解決とは何かを考え、時には弁護士に相談して紛争を予防することが肝要です。そのためには、信頼のおけるホームドクターならぬかかりつけの弁護士と知り合っておくといいでしょう。

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