刑事事件

刑事事件の手続き

  • 突然逮捕されました!いつまで拘束されますか

    逮捕されるとまず、警察の留置所又は拘置所に留置され、警察から取調べを受けることになります。逮捕手続によって警察が身体を拘束できる時間は48時間となっていますが、通常は、それまでに検察官の元へ事件を送られ、更に捜査を続ける必要がある場合、検察官は24時間以内に勾留を請求することになります。つまり、逮捕手続による身体的拘束は最大で72時間となります。

    検察により勾留が請求されると、今度は裁判官が勾留を認めるかどうかの判断をします。その判断基準は、犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由があるか、住居不定・証拠隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあるかどうかの2点を重視し決定されます。
    勾留が認められない場合は、晴れてここで釈放となりますが、勾留が認められた場合原則として、勾留請求の日から10日間身体を拘束されます。その間に捜査が終了しない時は、更に10日間を限度に延長されます。
    したがって、逮捕されると72時間+10日間+10日間で最大23日間、身体が拘束される可能性があります。
    よく、保釈という言葉を耳にする機会があるかと思いますが、保釈は起訴前には認められていません。

  • 面会ができないのですが

    留置所では、刑務所に比べて接見(面会)についての規制は緩やかですので、基本的には、肉親だけでなく友人知人や会社の同僚等とも面会することが可能です。しかしながら、逮捕から勾留手続に移る最大72時間の間は弁護人以外の人間と接見は禁じられています。よって最初に被疑者が面会することになるのは、警察を通じて呼んだ当番弁護士か、被疑者の知り合い又は知り合いが手配した弁護人となります。

    勾留が決まった後は、弁護人以外の人間と面会が可能です。ただし、接見できる時間帯は警察署によって若干の違いはありますが、基本的に午前9時から午後5時までとなっており、一日に一回までしか接見できません。制限時間は約15~20分で打ち切られ、会話の内容は全て記録されることになります。また、接見するかどうかの判断は被疑者にあり、仮に面会に行っても被疑者が接見したくないと言えば接見はできません。
    更に、事件の種類のよっては弁護人以外の人間とは一切接見できない(手紙等のやり取りもできない)接見禁止処分という措置が下される可能性があります。接見禁止処分とは、検察が裁判所に対して申請を行い決定されるものです。

  • 早く釈放して欲しい

    勾留された場合、釈放するための手続としては、次のものがあります。

    準抗告

    裁判官がした勾留状の発付について、弁護人が簡易裁判所の裁判官がした決定に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした決定に対してはその裁判官所属の裁判所に、その決定の取消又は変更を請求し、職務執行から排除すること。

    勾留取消請求

    勾留を決定した時点では、裁判官の判断に問題はなかったが、その後勾留の必要がなくなったと思われる場合にされる請求です。具体的には、被害者と被疑者との間で示談が成立しているような場合になされます。

    勾留の執行停止

    裁判官が適当と認める場合に、期間を限って勾留の裁判の執行を停止すること。具体的には入院の必要がある、親族が死亡して葬儀に出る必要があるなどといったことが主な理由となります。保釈と異なり、保釈金を納める必要はありません。

    保釈

    保釈とは、保釈保証金の納付を条件として、勾留中の被告人を現実の拘束状態から解放する制度です。正当な理由なく公判への出頭をしない場合や刑の執行の為の出頭を拒否した場合はこの保釈保証金は没収されます。
    保釈には、被告人・弁護人等の請求による場合と裁判所の適当と認める場合の職権によるものがあります。
    保釈が認める決定は、保証金を納付後に執行されますが以下のケースでは保釈が認められません。

    • 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
    • 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
    • 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
    • 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
    • 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
    • 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

    (刑事訴訟法第89条)

  • 逮捕されたら必ず裁判になりますか

    逮捕されると、必ずしも裁判になるわけではありません。
    検察官の判断によって起訴処分となった場合は裁判となるケースがありますが、検察官の事件処理で不起訴処分となった場合は裁判は行われません。不起訴処分は、被疑事実が犯罪とならない場合や証拠不十分又は証拠不存在の場合、刑の免除に値する理由がある場合、起訴猶予とすべき場合になされる決定です。また、判例では同一の犯罪について、被告人を二重に刑事手続に課すことを禁じていますが、一度不起訴になった事件について、後日起訴することはこの判例には違反しません。
    また、正式な公判を開かず書面審理だけで刑を言い渡す簡易な刑事裁判手続があります。これを略式手続といい、簡易裁判所が50万円以下の罰金又は科料を言い渡す場合かつ、被疑者が略式手続によることに異議がない場合に、起訴と同時に検察官の請求によって行われるものです。

  • 捜査にはどのような方法がありますか

    捜査には、強制捜査と任意捜査があります。

    強制捜査とは、逮捕・勾留・押収・捜索・検証等を対象となる者の意思に反して行うことの出来る処分です。強制捜査は、被疑者あるいはその他関係のある人々の権利を抑制するものとなるので、司法的抑制の対象となります。したがって、強制捜査は現行犯である場合以外は令状によるのを原則とし、その他特に刑事訴訟法に定めた場合以外は認められません。
    任意捜査とは、強制処分を用いない捜査一般のことを言い、聞き込み・尾行等があり、捜査の目的を達成する為に必要な限りで、広く許されている。

    また、捜査の流れは以下のとおりです。

    犯罪の発生

    110番通報や被害届の受理等で警察が事件の発生を知ると、捜査に着手することになります。

    捜査の開始

    警察は、被害者や事件関係者から事情聴取等をし、被害届・調書を作成し、証拠品の収集・提出、実況見分を行い、犯行の立証・犯人の特定に移ります。被疑者の権利を抑圧するような捜査の場合には、前述した強制捜査による手続を取り、証拠の確保・犯人の逮捕を行います。

    検察庁への送致

    警察は、捜査をして集まった資料を全て検察庁に提出します。
    検察庁は二次的捜査機関であり、検察官が送られてきた証拠を充分に検討し、被疑者や事件関係者から話を聞きます。
    検察官はこれら全てに鑑みて、最終的に起訴処分するか不起訴処分するかの判断を下し、捜査は一旦の終了を迎えます。

  • 取り調べはどのように進みますか

    普通の事件であれば警察による本格的な取調べは、被疑者が逮捕された翌日より始まります。(無論、事件の種類や被疑者自身が容疑内容を事前に認めているかいないか等で変わる場合もあります。) 取調べにおいて、最初に共通して必ず行われることは被疑者の権利の告知です。
    権利の告知には、以下のようなものがあります。

    黙秘権

    憲法第38条1項にて保障されている、自己に不利益な供述を強要されない権利。ここで言われる不利益とは、刑事責任を問われることや加重されるようなことをいい、民事上の責任に関わるものは含まれません。強要には、拷問のような直接的手段のみならず、過料や刑罰等による間接的手段も含まれます。
    黙秘権の効果として、供述しないということ自体から有罪その他不利益な心証をとることは禁止されています。

    署名押印拒否権

    刑事訴訟法第198条第4及び5項にて保障されている。供述調書作成の場面にて、警察は被疑者に対して供述調書に誤りがないかを確認させ、その上で署名に押印を求めますが、被疑者が内容を認めない場合、あるいは内容に一部違いがあるような場合は押印を拒否することが出来る権利。内容の訂正を求めることもできる。(増減変更申立権)

    権利告知の後に、本格的な取調べは始まります。日本の刑事事件において、被疑者の供述(自白)が最も有効な証拠となっていますので、捜査官も厳しく追及していきます。前述の黙秘権があるため、答えたくない質問にはもちろん答える必要はありませんが、捜査官も事件に関係のない雑談等から何とか会話をスタートさせ、そこから事件内容に切り込んでいこうとします。黙秘権を行使するのは意外と大変なようです。
    黙秘権を行使することなく、警察の捜査官の取調べを受けると、捜査官はメモ等を取りながら、被疑者に証拠を見せる等して事件内容を確認していきます。取調べが一区切りつくと捜査官は供述調書の作成に取り掛かります。作成された調書の内容に異存がなければ、全てのページに拇印を押し、最後のページに署名することになります。内容に不満がある場合は、捜査官に書き直しを要求することができます。よく、内容に少々不満があっても署名や拇印を押してしまいがちのようですが、取調べでの調書は自分の未来がかかったものとなりますので絶対に妥協してはいけません。

裁判について

  • 「起訴」とは何ですか

    起訴とは、刑事訴訟における公訴の提起のことです。検察官による捜査の結果、被疑者が間違いなく犯罪を起こしたと確信し、刑事処分が必要であると判断した場合、裁判所にて裁判を行う手続です。 日本では、公訴提起の権能を検察官だけに認めています。(起訴独占主義)これには、起訴・不起訴を公正かつ統一的に行うという利点がありますが、検察官の独善を招く危険もあるとされています。現行の刑事訴訟法は原則としてこの主義を採用していますが、準起訴手続や検察審査会制度を設けることで、その弊害の防止を図っています。

    準起訴手続

    公務員の職権濫用罪について検察官が、不起訴処分としたときに、公訴又は告発した者の請求により、裁判所が事件を審判に付するか否かを決定する手続。請求を受けた裁判所は審理を行い、事件を起訴すべきものと判断をするときは付審判の決定をする。

    検察審査会

    検察官の訴追権の運用に民意を反映させて、その適正化を図る為に作られた制度。衆議院議員の選挙権者から無作為に選定された11名の審査員が、検察官の不起訴処分の当否を審査する。不起訴不当・起訴相当の議決がなされると、検事正が事件の処理を再考する。起訴を強要しうるものではないが、訴追権運用の適正化に一定の影響を及ぼしているとされている。

    起訴には、以下の2種類のパターンがあります。

    「公判請求」

    裁判所での裁判を求める起訴の方法のこと。

    「略式請求」

    正式な公判を開かず書面審理だけで刑を言い渡す簡易な刑事裁判手続。簡易裁判所が50万円以下の罰金又は科料を言い渡す場合かつ、被疑者が略式手続によることに異議がない場合に、起訴と同時に検察官の請求によって行われるもの。

    起訴にあたり、検察官は起訴状を裁判所に提出します。起訴状には裁判所に対して、審判の対象を特定して提示し、被告人対して、攻撃の内容を告知して防御権の行使を全うさせてさせる機能を持ちます。 起訴状には、氏名その他被告人を特定するに足りる事項、公訴事実、罪名の記載が法律で義務付けられています。公訴事実は、訴因を明示して記載されます。訴因については、訴訟物の設定である為可能な限り罪となるべき事実を特定していなければならない。特定が不十分な場合には、検察官に釈明が求められ、それでも不十分な場合には、無効として公訴は、棄却されます。

  • 「不起訴」とは何ですか

    不起訴処分とは検察官の事件処理のうち、公訴を定義しない処分のことです。訴訟条件を欠く場合や被疑事実が犯罪とならない場合、証拠が不十分又は不存在の場合、刑の免除事由がある場合、及び起訴猶予とすべき場合になされます。
    起訴猶予とは、検察官の事件処理において、訴訟条件を満たし犯罪が立証できるにもかかわらず、訴追の必要がないとして不起訴にする処分です。犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の情況を総合考慮して決定されるものになります。日本では、明治時代からこの制度が実務慣行されていますが、近年ではこの裁量の幅を狭めるべきだという提案も多くなってきているようです。

  • 裁判の流れを知りたい

    刑事訴訟の第1回公判期日において、まず裁判官が検察官の起訴状朗読に先立ち、被告人に対して、人違いでないことを確かめるに足りる事項を問います。これを人定質問といい、通常は氏名・本籍地・住居・年齢・職業などを尋ねます。

    人定質問が終わると検察官の起訴状朗読が始まります。(起訴状に書かれている公訴事実を簡潔に説明し、その犯罪が何罪に当たるかを読み上げる行為。)

    次に、裁判官は取り調べでも行われた黙秘権の権利告知を行います。これは、取り調べにおける黙秘権の告知と変わらないもので、権利保護の為に必要な事項を告げていきます。この黙秘権を踏まえた上で、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会が与えられています。これを罪状認否といい、ここまでの手続を冒頭手続と呼びます。

    冒頭手続が終わると、証拠調べに入ります。証拠調べとは、裁判所が証拠方法を取り調べてその内容を把握し、心証を形成することです。その始まりとして、冒頭陳述というものが行われます。これは証拠調べの始まりとして、検察官により証拠によって証明する事実を明らかにすることです。冒頭陳述は、起訴状において訴因として示された事実について証拠との関連を明確にして検察官の主張を具体化させることを目的としていますが、犯罪事実の立証に必要な範囲内で犯行の動機や犯行に至る経緯、犯行後の状況等を述べることができます。冒頭陳述により、裁判所は、審理方法の樹立及び証拠の関連性などの判断材料を得ることが出来、被告人も防御の重点をどこに置くべきかを知ることが出来ます。その後、証拠調べの範囲・順序・方法の予定、証拠調べの請求と証拠決定、証拠の取調べ、証拠調べの終わった証拠の処置という順序で行われます。取調べの方式は、証拠の性質に応じて、尋問・朗読・展示等です。証拠調べには、当事者の活動が大きな要素を占め、職権証拠調べはむしろ補充的なものとされています。なお、証拠のうち、被告人の自白を記載した供述書・供述調書及び被告人の自白を内容とする第三者からの伝聞供述の証拠調べについては、他のすべての証拠についての証拠調べが終わった後に行うことが原則とされています。また、被告人が自分の意思で供述を行う場合には、被告人質問における被告人の供述も証拠となります。

    証拠調べが終わると、次に弁論手続に入ります。弁論手続とは当事者の意見陳述のことであり、具体的には検察官と被告人になります。ここで言われる意見とは、有罪・無罪の主張、犯罪の悪質性や被告人の更正可能性や情状に関わること、有罪だとすれば何罪に相当しどのくらいの求刑になるかという点になります。これが終わると、最後に被告人に自由に話させる機会を設けます。これを最終陳述といい、これが終わることで裁判は一度終了し、結審を待つこととなります。

  • 裁判員裁判って何ですか

    裁判員裁判とは、司法制度改革審議会が提言した、一般国民が刑事訴訟制度に参加する制度のことです。選挙人名簿から無作為に抽出された者から事件ごとに選出される裁判員が、職業裁判官とともに合議体を構成して刑事事件の審理を行うこととなります。裁判官と裁判員は基本的に対等な権限を持っており、共に評議することで、事件の有罪・無罪の決定及び刑の量定を行います。無論、裁判員は一般人であり有資格者と違い専門的知識は有しておりません。しかし、裁判員は自らの常識に照らし合わせて、有罪とすることに少しでも疑問があれば無罪、疑う余地がなければ有罪と判断することになります。いわゆる、疑わしきは罰せずという精神が根付いています。

    裁判員裁判の対象事件

    裁判員裁判は、全ての刑事事件が対象となるわけではなく、法定刑の重い重大犯罪が対象となります。代表的なものを挙げれば、殺人や強盗致死、傷害致死、危険運転致死、現住建造物等放火、身代金目的誘拐、保護責任者遺棄致死、覚せい剤取締法違反等が挙げられます。更に刑事裁判の控訴審・上告審や民事事件,少年審判等は裁判員裁判の対象にはなりません。また、公訴事実に対して被告人が認めていようが認めていなかろうが対象となります。被告側も、裁判員による裁判が行われるからといって裁判を辞退することは認められていません。

    裁判員裁判の特徴

    合議体の構成

    通常は、裁判官が3人又は1人で裁判手続を行い判決に至ります。しかし裁判員裁判では、選挙人名簿から無作為に抽出された者から事件ごとに選出される裁判員6名が審理に加わります。(例外として、裁判官1名・裁判員4名で構成される場合もあります。)

    事前準備を前提とした集中審理

    裁判員裁判では、冒頭手続から判決まで毎日公判が開かれることになります。これは、裁判員が職業裁判官と違い、普段は別に職を持っていたり生活に携わっていることから、負担を少しでも軽減しようと短期集中型の審理にする目的があります。大体3~14日程で判決に至るケースが多いようです。このような短期集中型の審理を可能にするためには、事前に弁護人・検察官・裁判所の三者間において争点の内容を明確にしておくことが重要となります。よって、裁判員裁判は公判前整理手続を行うことが義務付けられています。公判前整理手続で行われる内容には以下のようなものがあります。

    • 訴因、罰条を明確にさせるとともに、追加、撤回又は変更を許すこと。
    • 公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること。
    • 証拠調べの請求をさせ、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにするとともに、それに対する意見(刑事訴訟法第326条の同意の有無も含む)を確かめ、証拠調べをする決定または却下の決定をし、証拠調べをする決定をした証拠について証拠の取調べの順序及び方法を定め、証拠調べに関する異議の申立てに対する決定をすること。
    • 鑑定の実施手続きを行うこと。
    • 証拠開示に関する裁定を行うこと。
    • 被害者参加手続への参加決定またはこれを取り消す決定をすること。
    • 公判期日を定め、又は変更することその他公判手続の進行上必要な事項を定めること。

    公判前整理手続を義務化することで、審理スケジュールを明確にしスピーディな結審を迎えられるようにしています。

    弁護人による冒頭陳述

    通常の刑事裁判において、弁護人の冒頭陳述は任意のものとなっております。(検察官による冒頭陳述は義務付けられております。)しかし裁判員裁判においては、裁判員に対して事件の概要や弁護側の主張を明確にする為に弁護人にも冒頭陳述を行うことが義務付けられています。これは、裁判員が一般人であるということを考慮しているものであり、理解の手助けとして裁判員用のレジュメを配布したり、パワーポイントによる説明等を必要に応じて行うこともあります。

    わかりやすさを追求した裁判

    通常の刑事裁判では、証拠書面について法廷での朗読で事足りてしまい、裁判官が後ほどその証拠書面を精読して理解するという方式がとられることが多くなっています。(その為に、裁判が長引くケースもあります。)それに対して裁判員裁判では、証人の供述調書ではなく、直接証人を法廷に召喚し、話を聞くことで事実の判定に努めます。召喚できなかった証人に関する供述調書や、警察・検察による捜査報告書なども前述した短期集中型の審理であるという特性上、何度も読んだり熟読することは難しくなっていますので、そういった書面に関しては一回で理解が出来るようなわかりやすい書面が求められます。
    一般的な団体におけるプレゼンテーションを想像していただくとわかりやすいでしょう。裁判員裁判においては、視覚や聴覚に訴えて事件の審理を行うケースがほとんどとなっています。

    裁判員裁判の弁護に際して気を付けるべき点

    短期集中の裁判

    前述したとおり、裁判員裁判においては、限られた日数の中で一気に審理が行われるため、証拠書面を提出して裁判官に判断してもらうというこれまでの刑事裁判の手法はとれません。その為、証拠資料の朗読等では内容のわかりやすさはもちろんのこと、法律用語や概念をわかりやすい表現で伝えることが重要となります。また、原則として公判前整理手続にて提出した証拠以外の証拠を追加して審理に持ち込むことが禁じられている為、弁護側は今ある証拠の中で一貫した弁護をすることが求められます。

    法律用語の説明

    刑事裁判では、一般生活では聞きなれない法律用語がたびたび登場します。通常の刑事裁判であれば、審理を行うのは法律に精通した裁判官なので用語の説明はもちろん必要ありません。しかし裁判員裁判においては、一般人では理解できない法律用語や概念などを都度わかりやすい言葉に置き換えて説明をすることが求められます。例えば、法律用語に「善意」「悪意」という概念があります。これは一般生活における善意・悪意の概念とは大きく異なります。法律における善意とは端的に言えば「知らなかったこと」となり、悪意とは「知っていたこと」となります。こういった説明を裁判官はその都度挟みながら審理を行っていくことになります。

    公判前整理手続を使いこなす

    公判前整理手続において、まず、検察官より証明予定事実記載書面の提出と、これを証明するための証拠請求、証拠開示が行なわれます。その後弁護人は、検察官の手持ち証拠に対して類型証拠開示請求を行なうことになります。さらに、弁護人としては、予定主張の明示と検察官の手持ち証拠に対して主張関連証拠開示請求を行なうことになります。弁護人側にとっての公判前整理手続の最大の利点はこの証拠開示制度にあります。類型証拠開示請求においては、争点に関するものだけではなく検察官の請求証拠すべてにつき証明力を判断するために必要として、一定の類型に該当する検察官の手持ち証拠の開示を請求できます。そして、弁護人がどれだけ多くの証拠を開示させることができるかは、検察官の手持ち証拠としてどのような証拠があるのか、すなわち捜査機関がどのような捜査を行ない、どのような証拠を収集し、また証拠を作成していくのかについて、弁護人の知識・理解・推測力にかかるものといえます。
    (刑事訴訟法第316条参照)

    証人尋問における対応

    証人尋問では、犯罪事実を認めている場合であってもそうでない場合でも行われます。認めている場合であっても、抽象的な言葉で尋問を終わらせることはできません。今後、被告がどのように更正していくかを具体的かつ計画的に裁判員の方々に伝えることが必要になってきます。犯罪事実を認めない場合には、検察が用意している証人の証言の信憑性について議論する必要があります。

保釈について

  • 保釈はいつからできますか

    保釈とは、保釈保証金の納付を条件として、勾留中の被告人を現実的な拘束状態から解放する制度のことです。つまり、保釈金を払えば、勾留されることなく一般的な生活を送ることが出来ます。しかし、もちろんの事ではありますが公判への出頭はしなければなりません。もし、正当な理由なく出頭しない場合にはこの保釈保証金の一部又は全部が没取されることとなります。保釈は以下のケースで請求されます。

    • 被告人・弁護人等の請求による場合(請求保釈)
    • 職権で行う場合(職権保釈)
    • 保釈の請求があったときに必ずこれを許さなければならない場合(必要的保釈又は権利保釈)
    • 裁判所の裁量で保釈を許す場合(裁量保釈)
    • 拘禁が不当に長くなったため保釈を許さなければならない場合(義務的保釈)

    保釈請求が請求権者(基本的には被告人本人、その弁護人、その法定代理人(親権者)、保佐人、配偶者、直系の親族(両親、子供)もしくは兄弟姉妹)によって行われると次に裁判官面接が行われます。ここで重要になる話し合いは公判で争う意思があるのかと保釈保証金の額です。まず、検察官の提出する証拠書類に同意せず、公判にて争う意思がある被告に対しては保釈決定の許可はおりないと考えていいでしょう。ここをクリアした上で、この裁判官面接にて保釈保証金の額の決定が行われます。保釈保証金には正当な理由なく出頭しない際に一部又は全部が没取されるという心理的威嚇の効果を期待している側面があるため、被告にとって経済的負担として相当な額が決められます。もちろん資産を多く持っている人間には、ニュースやドラマでよく見るような億単位の保釈保証金が設定されますが、通常は、150万円~500万円で落ち着くことが多いようです。その後、検察官からの意見が裁判所に出されます。これは大きく分けて3つの意見が裁判所に提出されます。その3つとは、「保釈を認めます」「保釈を認めません」「裁判所の判断にお任せします」の3つになります。「保釈を認めます」という意見は実務上出ることが非常に少ないようです。なので「裁判所の判断にお任せします」という意見が出れば高確率で保釈が認められると考えていいでしょう。これらを全てクリアするとようやく保釈決定の許可が出ます。しかし、決定後すぐに勾留から解き放たれるわけではなく、保釈は保釈保証金の納付後に執行されます。(刑事訴訟法第94条第1項)保釈保証金の納付に関しては、基本保釈請求した者が払うのが原則ですが、裁判所が認めれば保釈請求者以外の者が納付することも可能です。また、納付するのは純粋な現金だけでなく有価証券又は保証書で保証金の代わりにすることも出来ます。保証書とは保証金の納付に代えて、被告人以外の者が差し出す書面のことで、内容には保証金額及びいつでもその保証金を納める旨が記載されています。保釈保証金は何事もなければ、全額返金されますが、没収された部分については返ってきません。

    保釈には、色々な条件が付けられることもあります。代表的なものは、住居の制限です。簡単に言えば、住む場所を限定させられるということになります。他には、被害者に近寄らないなどの条件が付されるときもあります。
    保釈中に被告人が正当な理由なく不出頭したり、逃亡、罪証隠滅等の事由が生じたときには保釈は取り消されます。保釈を取り消された場合、被告は速やかに収監されることになります。

  • 保釈金って何ですか

    保釈保証金とは、保釈の条件として納付を命じられる一定の金額になります。裁判所は、犯罪の性質・情状、証拠の証明力、被告人の資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な保証金額を定めなければなりません。(刑事訴訟法第93条)
    保釈金は、正当な理由なく公判等に出頭しない場合に没取されるという心理的威嚇の効果を期待しています。よって、保釈金の額は被告人が没収されたら苦しいと思える程の額のものでなければなりません。
    ドラマやニュースで保釈金が億単位のものを見かける機会が皆様もあると思います。参考までに、現在日本において保釈金の最高金額は20億円になっています。無論、被告人になくなった場合の経済的苦痛を考慮して額は決められていますが、過去には最高で6億円の保釈金が没取された例があります。(被告は韓国へ逃亡しました。)
    前述したものは、資産家であったり経済事件という性質の下に決められているもので、保釈金の具体的金額は一般人であれば、相場は100万円~500万円程とされています。(もちろん、保有している資産の額によって変動します。)
    保釈保証金は、基本的には保釈請求者(基本的には被告人本人、その弁護人、その法定代理人(親権者)、保佐人、配偶者、直系の親族(両親、子供)もしくは兄弟姉妹)が納付しますが、裁判所が許可すれば保釈請求者以外の者が納付することができ、純粋な現金だけではなく有価証券又は保証書(保証金の納付に代えて、被告人以外の者が差し出す書面のことで、内容には保証金額及びいつでもその保証金を納める旨が記載されています)で保釈保証金に代えることも出来ます。
    保釈金の調達方法には大きくわけて3つの方法があります。

    • 被告人自身の預貯金で支払う
    • 被告人の家族・親戚・勤務先などに立て替えてもらう
    • 業者から借り入れる

    業者には、日本保釈支援協会という社団法人が存在しています。この社団法人が保釈保証金を立て替えてくれたり、保証書の発行をしてくれたりしますが、額に応じて手数料が取られます。保釈できるならそのぐらい安いと思われることもあるかもしれませんが、ご利用は慎重になってください。

判決について

  • 「執行猶予」とは何ですか

    執行猶予とは、刑の言い渡しはするが、情状によって刑の執行を一定期間猶予し、猶予期間を無事経過したときは刑罰権を消滅させることとする制度のことです。
    これには、施設収容を避けて短期自由刑(刑期の極めて短い自由刑)に伴う弊害を防止し、猶予期間内に再犯すれば刑を執行するという威嚇の下に再犯を防止し、猶予期間を無事経過した際は刑の言い渡しの効果を消滅させて、前科に伴う不利益をなくし更正に役立てることを目的としています。
    執行猶予の要件は徐々に緩和されてきている傾向にあり、具体的には以下のような要件となっています。

    • 前に禁錮以上の刑に処されたことがないとき、処されていてもその執行終了後又は執行免除を受けた後5年経過しても、禁錮以上の刑に処されたことがない者が3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金に処されたとき
    • 前に禁錮以上の刑に処され、その執行猶予中の者(ただし保護観察中でない者)が1年以下の懲役又は禁錮の言い渡しを受け、情状が特に軽いとき

    以上の場合では1年以上5年以下の期間、執行を猶予できるものとされています。執行猶予付きの判決の場合,保護観察に付して,猶予の期間中,保護観察所の保護観察官や保護司の指導を受けるようにすることもあります。

  • どのくらいの刑になるか知りたい

    歴史的・世界的に刑罰は、剥奪の対象とされる犯罪者の法益の種類に応じて以下のようなものがあります。

    • 生命刑(人の生命を奪う刑罰)
    • 身体刑(人の身体を侵害する刑罰)
    • 自由刑(人の身体の自由を奪う刑罰)
    • 財産刑(人の財産を奪う刑罰)
    • 名誉刑(人の名誉を奪う刑罰)

    わが国の現行刑法では、生命刑としての死刑、自由刑としての懲役・禁錮・拘留、財産刑としての罰金・科料・没収のみ認められています。
    刑の具体的な執行内容は、刑法によって定められています。例えば、以下のように定められています。
    「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」(刑法第199条)
    これはいわゆる殺人罪に関する条文規定となっています。しかし刑の範囲が一番重いもので死刑、一番軽いもので5年の懲役と振れ幅が非常に大きいものとなっています。よって実際に宣告される刑の内容は、裁判所の判断に委ねられることとなります。これを量刑判断といいます。
    現行刑法の全ての刑罰規定において、量刑判断の基準に関して明示したものはありません。前述した殺人罪においても、死刑になるか懲役刑になるかは先例の積み重ねによって、事実上の選択基準が形成されているに過ぎません。量刑の判断には、明示されたものがあるわけではなく犯行の情状などに鑑みて、処断刑の範囲内で宣告されるものとなっています。(まれに、処断刑の範囲を超えた判決が言い渡される場合もあります。)

  • 刑の種類を知りたい

    歴史的・世界的に刑罰は、剥奪の対象とされる犯罪者の法益の種類に応じて以下のようなものがあります。

    • 生命刑(人の生命を奪う刑罰)
    • 身体刑(人の身体を侵害する刑罰)
    • 自由刑(人の身体の自由を奪う刑罰)
    • 財産刑(人の財産を奪う刑罰)
    • 名誉刑(人の名誉を奪う刑罰)

    わが国の現行刑法では、生命刑としての死刑、自由刑としての懲役・禁錮・拘留、財産刑としての罰金・科料・没収のみ認められています。これらはさらに主刑と付加刑に区別され、主刑は重い順に死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料があり、付加刑は主刑の言い渡しがある場合に限り、主刑に付加して科しうる刑罰で、没収だけが認められています。
    死刑は文字通り、被告の生命をもって償うものであり日本では刑事施設内での絞首によるものとなります。
    懲役刑は、監獄に拘置して所定の作業(刑務作業)に服させる有期懲役と無期懲役があります。有期懲役は1月以上15年以下が基本ですが、加重するときは20年まで、減軽するときは1月未満にすることが出来ます。無期懲役は、終身の期間にわたる懲役刑で拘禁の期間を定めずに言い渡されるものです。ただし、10年経過後、「改悛の状」(①悔悟の情が認められ②更生意欲があり③再犯のおそれがなく④社会感情が仮釈放を是正しているがある状態のこと)があるときは、行政官庁の処分をもって仮出獄を許されることがあります。
    禁固刑とは、監獄に拘置されることと有期・無期(有期の場合の期間も同じ)があることは懲役刑と変わりませんが、懲役刑と異なり刑務作業に科されません。(受刑者が作業をしたいと言えば従事することは許されています。)
    罰金刑は、最低金額が1万円以上とされています。また減軽する場合には1万円以下に下げられる場合もあります。もし、受刑者が罰金を完納できない場合には、1日以上2年以下労役場に留置されることになります。
    拘留とは、1日以上30日未満の期間、拘留場(通常は警察留置所)に拘置する刑のことで刑務作業は科されません。
    科料とは、1000円以上1万円未満の支払いを命じられる刑のことで、これも完納できない場合は、1日以上30日以下の期間労役所に留置されます。

  • 判決に納得がいかないのですが

    裁判に対して不服・納得のいかない場合、不服申し立てつまり上訴が設けられています。
    第一審の裁判所が下した判決に対して,その裁判所のすぐ上の上級裁判所に不服を申し立てることを控訴と言います。また、控訴審で下された判決に対して不服がある場合にはさらに上告によって不服を申し立てることができます。
    第一審の裁判所が簡易裁判所であれば、地方裁判所に控訴し、高等裁判所に上告することとなります。地方裁判所であれば、高等裁判所に控訴し、最高裁判所に上告することとなります。

    控訴

    控訴権は原則として、第一審の判決により不利益を受けた当事者に生ずるものになります。この不利益というのは、第一審における申立ての全部又は一部が排斥された状態のことを指します。当事者でない場合の不利益に関しては、原則として控訴は棄却されるものとなります。
    更に、刑事訴訟法においては控訴の要件が更に限定的なものとなり、以下のものになります。

    • 1.法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
    • 2.法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
    • 3.審判の公開に関する規定に違反したこと。
    • 4.不法に管轄又は管轄違を認めたこと。
    • 5.不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。
    • 6.審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。
    • 7.判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。
    • 8.刑事訴訟法377条、378条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があってその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであること。
    • 9.法令の適用に誤りがあってその誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであること。
    • 10.刑の量刑が不当であること。
    • 11.事実の誤認があってその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであること。
    • 12.再審の請求ができる場合に当たる事由があること。
    • 13.判決があった後に刑の廃止もしくは変更または大赦があったこと。

    (刑事訴訟法第377条~383条より)

    上告

    刑事訴訟法における、上告とは高等裁判所がした判決に対する上訴であり、ほとんどが控訴審判決に対する上訴となります。
    これは最高裁判所が管轄するものであり、憲法違反又は判例違反を理由とする場合にのみ、権利として申し立てることができます。(刑事訴訟法405条)
    ただし、上記の理由がない場合であっても最高裁判所の職権による原判決破棄の権限が認められていること(刑事訴訟法411条)から、実際に現場においては、この職権破棄を期待した上告申立てが多くなっています。
    また、上告棄却とは上告人が主張する上告理由がないとして、上告を排斥する裁判になります。その他上告棄却する場合は以下のケースです。

    • 1.原判決に上告人の主張する上告理由があっても、他の理由によって原判決が正当と認められる場合。
    • 2.刑事訴訟において、上告の申立てが法令上の方式に違反したとき、又は上告権消滅後にされたとき。
    • 3.上告の申立て理由が明らかに刑事訴訟法第405条の法定理由に該当しないとき。

    つまり、前述させて頂いた職権破棄を期待して上告することが多いということは、決定で上告が棄却される例が多いということに繋がります。

    控訴審の流れは?

    控訴が認められるためには、控訴審が紛争の内容について判断するために必要な要件(控訴の用件)を満たさなければなりません。この控訴の用件で重要なものは、控訴期間控訴の利益といえます。

    控訴期間

    控訴するか否かは、第一審の判決書の送達を受けてから14日間以内で判断しなければならない

    控訴の利益

    裁判で申し立てた(請求の趣旨)と第一審の判決の主文とを比較して、判決の主文が請求の趣旨に満たなければならない

    上記を踏まえたうえで控訴した場合

    民事訴訟の場合、控訴状提出から50日以内に控訴理由書を提出すべきことが定められています。控訴理由書を提出する他、控訴審で新たに証拠を提出することができます。これに対し被控訴人からは控訴答弁書等が提出され、控訴審で口頭弁論期日が開かれます。審理が終わると判決が言い渡されます。(和解協議が行われる場合もある)

    刑事訴訟においては控訴期間内に、控訴審を担当する裁判所宛の控訴申立書を第一審の裁判所に提出して控訴の提起をし、さらに控訴申立人は、提出期限までに控訴趣意書を提出しなければなりません。

    控訴するか否かの判断

    刑事事件において控訴するということは、決して自分に有利な判決を得られる可能性があるというメリットだけではありません。
    控訴をするということは、裁判を長引かせるということと同義です。その為、拘置所における勾留期間が長引く可能性が出てきます。そのため、更に拘置所に勾留されることになります。(未決拘留日数のうち,一部が刑に算入されますが、全ての日数にはなりません。)
    また、検察側が控訴することで第一審の判決を超える量刑が課されることはありません。これを不利益変更禁止と言います。

少年事件について

  • 子どもが逮捕されました!これからどうなりますか

    子どもが逮捕された際の事件処理は基本的には、勾留中は成人の被疑者と同様の捜査が行われますが、その後は家庭裁判所に送致され、調査を経て、少年審判を受けることになります。少年審判では、非行事実の有無やその内容、要保護性の程度により、不処分・保護観察・少年院送致等の保護処分もしくは検察官送致の決定処分が下されることになります。

    少年審判の対象となる少年の分類

    犯罪少年

    14歳以上20歳未満で刑罰法令に抵触する行為をした少年

    触法少年

    14歳未満で刑罰法令に抵触する行為をした少年

    ぐ犯少年

    特定の事由があり、さらにその性格または環境に照らし、将来刑罰法規に触れる行為をするおそれがある少年。特定の事由とは以下のようなものを指します。

    • 保護者の正当な監護に服しない
    • 正当な理由がなく家庭に寄り付かない
    • 犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りしている
    • 自己又は他人の特性を害する行為をする性癖がある

    それぞれで、事件処理の体系が異なる場面があります。こちらについては後述します。

    逮捕から捜査に至るまで

    犯罪少年の場合、逮捕・勾留の手続や期間については、成人と同様に刑事訴訟法及び刑事訴訟規則が適用されます。よって刑事訴訟法第203条及び205条により、警察は逮捕した被疑者を逮捕から48時間以内に検察官に送致しなければならず、その後24時間以内に勾留の裁判を受けて勾留されない限り釈放しなければなりません。勾留が決定されれば、延長請求された場合最大20日間身体拘束されます。
    触法少年の場合は刑法第41条により刑事責任能力がないため、逮捕・勾留はできません。しかし一時保護されることがあります。警察は事件を調査した上で、児童相談所に通告ないし送致をします。児童相談所所長は、通告ないし送致を受けた少年について児童福祉法上の措置を行うか家庭裁判所に送致します。12歳以上の少年の場合には審判の結果、少年院に送致されることもあります。
    ぐ犯少年も、まだ罪を犯すに至っていないので、逮捕・勾留はできません。

    家庭裁判所への送致

    司法警察員は、少年の被疑事件について捜査をした結果、罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑あるものと思われるときは家庭裁判所に送致しなければなりません。また検察官は、少年の被疑事件について捜査をした結果、犯罪の嫌疑ありと判断した際に家庭裁判所に送致をしなければなりません。このように、捜査機関が捜査を行った上で犯罪を行った事実の疑いがある場合は、少年事件の場合全てが家庭裁判所へ送致されることになります。これを全件送致主義と呼びます。
    送致の方法は、逮捕・勾留されている場合は通常、捜査記録と共に身柄つきで家庭裁判所に送致されます。逮捕・勾留がされずに在宅で捜査が行われた場合には、書類送致の方法で家庭裁判所へ送致がなされます。捜査をした少年事件について、その事件が極めて軽微であり、犯罪の原因及び動機・少年の性格・行状・家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分や保護処分を必要としないと明らかに認められて、検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定された事件については簡易送致がなされることがあります。

    家庭裁判所送致後の手続

    観護措置

    警察官及び検察官は、事件を家庭裁判所に送致する際に、少年鑑別所における心身鑑別を要するかどうかの意見を付します。家庭裁判所は身柄付で少年が送致された場合に、その日のうちに観護措置審問を行い、観護措置に付すかどうかを決定します。在宅のまま家庭裁判所に送致された場合であっても、家庭裁判所が必要と認めたときは、観護措置決定を行い、少年鑑別所に送致することもあります。観護措置とは、家庭裁判所に送致された少年の身体を保全することで、審判までの間に、少年の逃亡による調査・審判が出来なくなることの防止の為の制度です。観護措置の要件として、少年法では「審判を行う必要があるとき」としか定めておりません。(少年法第17条第1項)しかし解釈上は、非行事実の存在を疑うに相当な理由がある場合や身体を保全する必要性などが要件として挙げられます。観護措置の決定は家庭裁判所への送致後、24時間以内になされなければなりません。

    少年鑑別所

    少年鑑別所とは、観護措置がとられた少年を収容し、行動観察や資質鑑別を行う国の施設です。法務省の矯正局が管轄しています。少年鑑別所の職員は、少年院と同じ法務教官です。少年鑑別所では、収容中の行動観察や身体測定・知能テスト・心理テスト等様々な手法を用いて少年の特性に合わせた方法で鑑別を行います。少年鑑別所は、行動観察や資質鑑別の結果をまとめ、保護処分やその後の処遇に関する意見を記載した鑑別結果通知書を審判前に家庭裁判所に提出します。

    審判不開始決定

    実際には少ないケースですが、調査の結果、審判を開始する必要がない場合には、審判開始決定を取り消して、審判不開始の決定をすることが出来ます。

    家庭裁判所の調査官による調査

    家庭裁判所の調査官は、裁判官の調査命令を受けて、少年の用保護性を判断する為の社会調査を行います。具体的には、保護者・学校・児童相談所・保護観察所等関係機関に照会を行ったり、少年本人やその保護者と面談するなどの方法で調査を行います。家庭裁判所調査官は、裁判官のような法曹ではなく心理学や社会学・教育学に精通した人が多いです。家庭裁判所調査官は、社会調査の結果を調査票にまとめて、裁判官に提出し報告します。調査票には、調査官本人の処遇に関する意見も付されています。調査票完成前にも調査官は口頭で適宜裁判官に報告をし、処遇に関する意見を述べなければなりません。

    少年審判の方法及び終局決定

    少年審判は、懇切として和やかに、少年に自己の非行について内省を促すよう、非公開で行われます。(少年法第22条)非公開ということで一般の公判と違い、傍聴はできません。これは少年の矯正や社会復帰の為にプライバシー保護の観点から行われています。審判の流れは、通常以下のようになります。

    • 少年・保護者の人定質問
    • 黙秘権の告知
    • 非行事実の告知
    • 非行事実に対する少年の陳述
    • 非行事実に対する付添人の陳述
    • 非行事実の審理
    • 要保護性に関する審理
    • 調査官・付添人の処遇意見の陳述
    • 少年の意見陳述
    • 決定の告知

    終局決定については以下のものがあげられます。

    審判不開始決定

    前述した、調査の結果、審判を開始する必要がない場合には、審判開始決定を取り消して、審判不開始の決定をすること。

    不処分決定

    処分をしなくとも調査・審判等における様々な教育的働きかけにより少年に再非行のおそれがないと認められた場合に少年を処分しないことすること。

    保護処分決定

    非行少年に対して、刑罰を避けて非行深度に応じた健全育成のための処遇を施す決定。以下のようなものがある。

    保護観察処分

    少年が非行を起こした事実は認められるが、少年を矯正施設に収容せずに、社会内で、適当な指導者の補導援護と指導監督の下に自発的な改善更正・社会復帰を促進する措置。

    少年院送致

    再犯する可能性や一般社会での更正が難しい場合に少年院に収容する措置のこと。少年の年齢・非行深度・心身の状況により、初等少年院・中等少年院・特別少年院・医療少年院の4箇所に振り分けられます。

    児童自立支援施設送致

    不良行為をし又はおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由で生活指導を必要とする少年を入所・通所させて、その自立を支援することを目的とする措置。

    児童養護施設送致

    環境上養護を要する児童を入所させこれを養護することを目的とする処分。

    検察官送致決定

    子どもの年齢やその他事情によっては、少年審判において刑事処分相当と判断される場合があります。その場合になされるのが検察官送致です。これがなされると、起訴されて通常の刑事裁判の手続を受けることになります。検察官送致されるのは以下のケースです。

    • 禁錮以上の当たる罪の事件について、事案の内容や子どもの年齢その他の事情を考慮して、家庭裁判所の裁判官が、当該少年については保護処分ではなく刑事処分が相当とする場合。
    • 家庭裁判所送致後、少年審判までの間に、子どもが20歳の誕生日を迎えて成人してしまった場合

    刑事処分相当の判断基準は、少年法第20条第1項によれば、「罪質及び情状に照らして刑事処分相当と認めるとき」と記載されています。どのようなときに認められるのかは、判例によれば保護処分による矯正の見込みがない場合や保護処分による矯正の可能性があっても、事案の内容や事件が社会に与える影響を考慮した上で、保護処分に付するに相当でない場合としています。

  • 家裁送致って何ですか

    成年が犯した事件であっても、少年事件であっても警察による逮捕から検察による勾留に至るまでの流れはさほど変わりません。(検察官による観護措置請求が行われる場合はこの限りではありません。観護措置に関しては後述します。)しかしその後、少年事件に関しては家裁送致という手続が取られます。これは、捜査書類と少年の身柄を家庭裁判所に預けるものです。(在宅事件の場合は、捜査書類のみが送られることになります。)家裁送致を受けた場合は、24時間以内に家庭裁判所の裁判官が面談を行い、引き続き調査をする必要があると判断すれば、少年の身柄を保全する為に少年鑑別所に収容する観護措置という手続が行われます。次に、家庭裁判所の調査官による調査が行われます。調査官は法律のスペシャリストというよりは社会学・心理学等のスペシャリストであり、少年の生活環境や交友関係、家庭内での内情等を調べ裁判官に報告します。

  • 少年鑑別所はどんなところですか

    少年鑑別所とは、少年審判を受ける必要上家庭裁判所から観護措置として送致された少年の身柄を収容するとともに、家庭裁判所の行う少年に対する調査・審判並びに保護処分及び懲役又は禁錮の言い渡しを受けた16歳未満の少年に対する刑の執行に資するため、医学・心理学・教育学・社会学その他専門的知識に基づき、少年の資質の鑑別を行う施設のことです。
    噛み砕いて言ってしまえば、少年の人格やこの子にはこういうことが向いているといったことを精神科医や心理学者が様々な手法を用いて調べていく場所になります。もちろん身柄を拘束されていることは留置所・拘置所・刑務所等と何も変わりませんが、面会ができないわけでもありませんし手紙のやり取りだってすることができます。少年鑑別所は単なる拘禁施設としての役割でなく、資質鑑別を通じて、少年の科学的処遇の実現の為に重要な役割を果たしていると言ってよいでしょう。なお、この少年鑑別所は平成26年12月現在全国に52庁設置されています。

  • 付添人って弁護人とは違うのですか

    付添人とは、家庭裁判所送致後に家庭裁判所とは独立した立場で、少年のパートナーとして、少年及び保護者に法的その他支援を行います。少年は、保護者の意思に反しても独立して付添人を選任することができ、付添人は弁護士であることを必要としませんが、弁護士以外の者が付添人になる場合には、家庭裁判所の許可が必要になります。
    付添人の権限や役割については、以下のようなものがあります。

    少年との面会

    通常、施設に収容され身体を拘束された少年への面会は必ず職員が立ち会いますが、付添人は少年と立会いなし・制限時間なしで面会をすることが可能になっています。

    記録の閲覧・謄写

    少年本人や保護者には、被害者その他関係者のプライバシー保護の観点上、家庭裁判所の許可がない限り法律記録や社会記録を閲覧する権利はありません。特に社会記録は、原則として少年本人や保護者の閲覧が許可されることはありません。しかし、弁護士である付添人にはこれらを閲覧する権限があり、家庭裁判所の許可があれば謄写もできます。

    不必要な身体拘束からの解放

    付添人は、少年を少年鑑別所に収容して心身鑑別をする必要がない場合や、身体の拘束が少年に著しい不利益を与える場合には、必要な資料を揃え、具体的事情を指摘して、家庭裁判所に観護措置決定しないように求めたり、観護措置の取り消しを求めたりすることができます。

    被害者対応・環境調整

    付添人は、少年の更生や健全な成長発達のために、親子関係の調整や学校・職場等少年を取り巻く環境の調整や被害者に対する謝罪や示談交渉を行うことができます。

    処分に関する意見、証拠の収集・提出

    付添人は、少年の最善の利益を考え、少年の処分に対し、意見を述べ、証拠を提出することができます。証人尋問その他の証拠調べを申し出ることもできます。

    審判への出席

    付添人は審判に出席することができ、審判の場でも、少年が十分に自己の弁解や気持ちを話すことができるよう支援することができます。審判中に裁判長に告げて少年に発問することや、裁判長の許可を得て意見を述べることもできます。

    適正手続の保障

    少年事件の手続は、基本的に刑事罰を与えることではなく、社会復帰や更正を目的としています。よって、非行事実の認定や処遇選択等あらゆる場面において公正な手続が保障されていなければなりません。精神的知識的に未熟な少年の代わりに適正な手続のチェックをすることは付添人の重要な役割であるといえます。

    少年の手続への参加のサポート

    少年は精神的にまだ未熟な部分があり、言い分や気持ちを的確に表現できなかったり、嫌疑の内容を十分に把握していないことがあります。そのままでは、自分の審判に主体的に参加することができず、自らの問題点も理解できません。その為、付添人は、少年の最善の利益を図る為に、少年に寄り添って少年が審判対象となっている非行事実の内容・行われている手続・自分の問題点等を理解できるように支援し、少年が主体的に手続に参加できる手助けをしなければなりません。

  • 処分にはどのような種類がありますか

    少年事件における審判決定には以下のようなものがあります。

    不処分

    犯罪を行ったとするに、充分な証拠がない場合や審判・調査においてり少年に再非行のおそれがないと認められた場合、少年を処分しないこととすること。

    保護観察

    矯正施設に収容することなく、社会内で適当な指導者の補導援護と指導監督の下に、自発的な改善更正、社会復帰を促進するソーシャル・ケースワークの性質をもった措置のこと。保護観察は、主として地域社会の篤志家から選ばれた保護司によって行われていますが、専門職員による保護観察と民間篤志家による保護観察の長短が近年取り立たされています。

    少年院送致

    再犯する可能性や一般社会での更正が難しい場合に少年院に収容する措置のこと。少年の年齢・非行深度・心身の状況により、初等少年院・中等少年院・特別少年院・医療少年院の4箇所に振り分けられます。

    検察官送致

    検察官から送致された少年を裁判所が調査・審判した結果刑事処分相当とする場合に事件を検察官に送致すること。逆送とも呼ばれることがある。平成12年の少年法の改正により16歳未満の少年も対象となり、犯行時16歳以上で故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪については、原則として検察官送致が義務付けられています。

    また、審判不開始・不処分の際行われる訓戒・環境調整などの事実上の保護的措置も行われており、これらの措置を正規の保護処分に取り入れ、保護処分の多元化を図るのが相当であるという提案も出ています。

弁護士費用

  • 刑事事件の弁護士費用
    事件の内容 着手金 報酬金
    起訴前 30万円以上
    40万円以下
    ・不起訴、求略式命令
    30万円以上 40万円以下
    ・無罪
    50万円以上
    起訴後 30万円以上
    40万円以下
    ・刑の執行猶予、求刑された刑が減刑された場合、その他
    30万円以上

    (注)

    • 接見等で遠方に出張する場合、高木光春法律事務所の旅費・日当規定に基づき別途実費をいただきます。
    • 事案が複雑で労力を要する場合、ご相談により上記基準を超える金額を頂く場合もございます。

    少年事件

    事件の内容 着手金 報酬金
    家庭裁判所送致前および送致後 30万円以上
    40万円以下
    ・非行事実なしに基づく審判不開始
    40万円以上
    ・その他
    30万円以上

    (注)

    • 接見等で遠方に出張する場合、高木光春法律事務所の旅費・日当規定に基づき別途実費をいただきます。
    • 事案が複雑で労力を要する場合、ご相談により上記基準を超える金額を頂く場合もございます。