裁判員裁判って何ですか

裁判員裁判とは、司法制度改革審議会が提言した、一般国民が刑事訴訟制度に参加する制度のことです。選挙人名簿から無作為に抽出された者から事件ごとに選出される裁判員が、職業裁判官とともに合議体を構成して刑事事件の審理を行うこととなります。裁判官と裁判員は基本的に対等な権限を持っており、共に評議することで、事件の有罪・無罪の決定及び刑の量定を行います。無論、裁判員は一般人であり有資格者と違い専門的知識は有しておりません。しかし、裁判員は自らの常識に照らし合わせて、有罪とすることに少しでも疑問があれば無罪、疑う余地がなければ有罪と判断することになります。いわゆる、疑わしきは罰せずという精神が根付いています。

裁判員裁判の対象事件

裁判員裁判は、全ての刑事事件が対象となるわけではなく、法定刑の重い重大犯罪が対象となります。代表的なものを挙げれば、殺人や強盗致死、傷害致死、危険運転致死、現住建造物等放火、身代金目的誘拐、保護責任者遺棄致死、覚せい剤取締法違反等が挙げられます。更に刑事裁判の控訴審・上告審や民事事件,少年審判等は裁判員裁判の対象にはなりません。また、公訴事実に対して被告人が認めていようが認めていなかろうが対象となります。被告側も、裁判員による裁判が行われるからといって裁判を辞退することは認められていません。

裁判員裁判の特徴

合議体の構成

通常は、裁判官が3人又は1人で裁判手続を行い判決に至ります。しかし裁判員裁判では、選挙人名簿から無作為に抽出された者から事件ごとに選出される裁判員6名が審理に加わります。(例外として、裁判官1名・裁判員4名で構成される場合もあります。)

事前準備を前提とした集中審理

裁判員裁判では、冒頭手続から判決まで毎日公判が開かれることになります。これは、裁判員が職業裁判官と違い、普段は別に職を持っていたり生活に携わっていることから、負担を少しでも軽減しようと短期集中型の審理にする目的があります。大体3~14日程で判決に至るケースが多いようです。このような短期集中型の審理を可能にするためには、事前に弁護人・検察官・裁判所の三者間において争点の内容を明確にしておくことが重要となります。よって、裁判員裁判は公判前整理手続を行うことが義務付けられています。公判前整理手続で行われる内容には以下のようなものがあります。

  • 訴因、罰条を明確にさせるとともに、追加、撤回又は変更を許すこと。
  • 公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること。
  • 証拠調べの請求をさせ、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにするとともに、それに対する意見(刑事訴訟法第326条の同意の有無も含む)を確かめ、証拠調べをする決定または却下の決定をし、証拠調べをする決定をした証拠について証拠の取調べの順序及び方法を定め、証拠調べに関する異議の申立てに対する決定をすること。
  • 鑑定の実施手続きを行うこと。
  • 証拠開示に関する裁定を行うこと。
  • 被害者参加手続への参加決定またはこれを取り消す決定をすること。
  • 公判期日を定め、又は変更することその他公判手続の進行上必要な事項を定めること。

公判前整理手続を義務化することで、審理スケジュールを明確にしスピーディな結審を迎えられるようにしています。

弁護人による冒頭陳述

通常の刑事裁判において、弁護人の冒頭陳述は任意のものとなっております。(検察官による冒頭陳述は義務付けられております。)しかし裁判員裁判においては、裁判員に対して事件の概要や弁護側の主張を明確にする為に弁護人にも冒頭陳述を行うことが義務付けられています。これは、裁判員が一般人であるということを考慮しているものであり、理解の手助けとして裁判員用のレジュメを配布したり、パワーポイントによる説明等を必要に応じて行うこともあります。

わかりやすさを追求した裁判

通常の刑事裁判では、証拠書面について法廷での朗読で事足りてしまい、裁判官が後ほどその証拠書面を精読して理解するという方式がとられることが多くなっています。(その為に、裁判が長引くケースもあります。)それに対して裁判員裁判では、証人の供述調書ではなく、直接証人を法廷に召喚し、話を聞くことで事実の判定に努めます。召喚できなかった証人に関する供述調書や、警察・検察による捜査報告書なども前述した短期集中型の審理であるという特性上、何度も読んだり熟読することは難しくなっていますので、そういった書面に関しては一回で理解が出来るようなわかりやすい書面が求められます。
一般的な団体におけるプレゼンテーションを想像していただくとわかりやすいでしょう。裁判員裁判においては、視覚や聴覚に訴えて事件の審理を行うケースがほとんどとなっています。

裁判員裁判の弁護に際して気を付けるべき点

短期集中の裁判

前述したとおり、裁判員裁判においては、限られた日数の中で一気に審理が行われるため、証拠書面を提出して裁判官に判断してもらうというこれまでの刑事裁判の手法はとれません。その為、証拠資料の朗読等では内容のわかりやすさはもちろんのこと、法律用語や概念をわかりやすい表現で伝えることが重要となります。また、原則として公判前整理手続にて提出した証拠以外の証拠を追加して審理に持ち込むことが禁じられている為、弁護側は今ある証拠の中で一貫した弁護をすることが求められます。

法律用語の説明

刑事裁判では、一般生活では聞きなれない法律用語がたびたび登場します。通常の刑事裁判であれば、審理を行うのは法律に精通した裁判官なので用語の説明はもちろん必要ありません。しかし裁判員裁判においては、一般人では理解できない法律用語や概念などを都度わかりやすい言葉に置き換えて説明をすることが求められます。例えば、法律用語に「善意」「悪意」という概念があります。これは一般生活における善意・悪意の概念とは大きく異なります。法律における善意とは端的に言えば「知らなかったこと」となり、悪意とは「知っていたこと」となります。こういった説明を裁判官はその都度挟みながら審理を行っていくことになります。

公判前整理手続を使いこなす

公判前整理手続において、まず、検察官より証明予定事実記載書面の提出と、これを証明するための証拠請求、証拠開示が行なわれます。その後弁護人は、検察官の手持ち証拠に対して類型証拠開示請求を行なうことになります。さらに、弁護人としては、予定主張の明示と検察官の手持ち証拠に対して主張関連証拠開示請求を行なうことになります。弁護人側にとっての公判前整理手続の最大の利点はこの証拠開示制度にあります。類型証拠開示請求においては、争点に関するものだけではなく検察官の請求証拠すべてにつき証明力を判断するために必要として、一定の類型に該当する検察官の手持ち証拠の開示を請求できます。そして、弁護人がどれだけ多くの証拠を開示させることができるかは、検察官の手持ち証拠としてどのような証拠があるのか、すなわち捜査機関がどのような捜査を行ない、どのような証拠を収集し、また証拠を作成していくのかについて、弁護人の知識・理解・推測力にかかるものといえます。
(刑事訴訟法第316条参照)

証人尋問における対応

証人尋問では、犯罪事実を認めている場合であってもそうでない場合でも行われます。認めている場合であっても、抽象的な言葉で尋問を終わらせることはできません。今後、被告がどのように更正していくかを具体的かつ計画的に裁判員の方々に伝えることが必要になってきます。犯罪事実を認めない場合には、検察が用意している証人の証言の信憑性について議論する必要があります。