労働審判を申し立てられました。どういう制度ですか?

労働審判は、労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2人(使用者側1人、労働者側1人)で組織された労働審判委員会が、個別労働紛争を、原則として3回以内の期日で審理し、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行うという紛争解決手続です。
次のような特徴があげられます。

迅速な対応が要求されること

労働審判は、迅速な解決を目指すものであるため、原則として3回以内の期日で審理が終結されます。
第1回目は、申立てから40日以内に指定されます(規則13条)。
労働審判委員会は、第1回期日に、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をし、可能な証拠調べを実施して審理の終結を目指すこととされ(規則21条)、第1回期日に審理を終結できない場合等に初めて次回期日を指定すべきこととされています(規則21条2項)。
このように、労働審判は、訴訟が長期間かかることに比べると、日程が非常にタイトです。そして、第1回目の期日で主張や証拠が出揃い、裁判所(労働審判委員会)の心証が得られ、調停案(和解案)が提示されることも多いです。
労働審判においては、第1回目が勝負といえます。そして、このことは会社側にとっては、迅速に対応することが極めて重要であることを意味します。解雇の有効性等が争われる場合には、会社側に立証責任があります。したがって、第1回期日までに、事前に会社の主張をきちんと文書(答弁書)にまとめ、その証拠を十分揃えて裁判所に送付することが求められます。このような準備を40日に満たない期間で行わなければならいのですから、会社側の負担は非常に大きいといえます。上で述べたように、会社側に立証責任があることが多く書面も提出する証拠も膨大になります。労働審判を申し立てられた場合、一刻も早く、労働審判手続に精通した弁護士に相談しましょう。

柔軟な解決が可能であること

裁判での判決は請求が認められないか、請求が認められるかの判断しかありません。例えば、解雇無効を訴訟で訴えた場合、裁判所は解雇が無効か有効かの判断が行われます。
労働審判においては、手続きの過程で調停の成立による解決の見込がある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判を行う(法1条)ものとされています。つまり、紛争の実情に即して、調停(話し合い)による柔軟な解決が可能となります。

手続きが強制されること

都道府県労働委員会が扱うあっせん制度は、行政サービスのため出頭義務はありません。そのため相手方が出頭しないと何も進まないという問題がありました。労働審判では、労働審判官からの呼び出しに対して正当な理由無く出頭しなかった関係人は5万円以下の科料に科せられます(法31条)

非公開であること

手続は柔軟な解決を目指しているので非公開で行われます。非公開とすることで、双方当事者の率直な意見の表明、意見交換、交渉、議論を促進して、当事者の互譲につなげていくという狙いがあります。
当事務所では、労働審判事件についても迅速に対応できます。労働者から申し立てがあった時には、準備の期間をできるだけ確保するためにも、まずは事務所までご相談下さい。


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