離婚と子ども

離婚後の子どもの氏は

両親が離婚して一方が戸籍から抜けても、父母どちらかが親権者になっても、子どもの戸籍は元のままで変わりません。
例えば、協議離婚で母親が子どもの親権者となり、子どもと生活することになり、母親が戸籍を抜けて新しい戸籍を作っても、子どもは父親を筆頭者とする戸籍のままで姓も変わりません。子どもの戸籍の記載事項に「父母が協議離婚をし、親権者を母とする」ということが記されるだけです。また、子どもを連れて離婚した母親が旧姓に戻っても、子どもの姓は変わりません。母親が離婚時に「離婚の際に称していた氏を称する届」を出し、離婚前と同じ姓を名乗った場合も、母親と子どもの姓は同じですが、戸籍は別々になります。
父親が親権者となって子どもと生活する場合、両親が離婚しても、戸籍上・子どもの氏に影響はないため、子どもは父親の氏を名乗り続けることになります。姓も戸籍も同じですので問題はないでしょう。
母親が親権者となって暮らす場合、母子の戸籍や姓が違うと、社会生活上、様々な支障が生じることがあります。親権者である母親が子どもに同じ姓を名乗らせ、同じ戸籍にしたい場合は、下記の手続きをとります。

  • 離婚の際に母親を筆頭者とする新しい戸籍を作る。
  • 家庭裁判所に子の氏の変更許可を得る手続きをとる。
  • 変更許可を得たら、子どもを母親の戸籍に入籍する。

また、母親が離婚前の姓を選択し、子どもと同じ姓を名乗っている場合も、続きは同じです。

養育費を増額・減額したい

一度決められた養育費は、普通ある程度先の見通しに立った上で決められるものですから、それを変更することは困難になります。
しかし、養育費のように年々子どもの成長につれてかかる費用も変化し、それが10年、15年と長期間にわたるものは、社会情勢・物価水準の変化に伴い、養育費の額も変更できることを認めないと不公平になる恐れがあります。物価の変動に加えて、子の事情として、進学による教育費の増加、病気、事故などによる医療費の増加などがあり、その子の親権者・監護者の事情としては、勤務先の倒産、病気、怪我など、やむを得ない事情により収入の低下をきたしたことなどが考えられます。養育費を取り決める際に当事者が、変更が予見し得た事情が現実化したにすぎないような場合などは「事情の変更」があったとは認められないとした決定もあります。しかし、養育費は子の福祉のためのものですから必ず増額又は減額が認められるわけではありません。
そして、支払う側の事情としては、養育費を決めた時点よりも収入がアップしていること、つまり養育費の増額に応じられる事情があることが必要になります。逆に、支払う側に支払いの継続が困難なやむを得ない事情が発生し、受け取る側が収入の増加安定を得たときは、減額の請求もできる理屈になりますが、裁判所に正式に減額を請求する例は少なく、事実上減額送金、送金遅滞となってしまうようです。
養育費の増減額も、まずは親同士の話し合いで決める問題となります。もし話し合いができないとき、あるいは話し合いがつかないときは、家庭裁判所に養育費の増減額を求める調停の申し立てができます。子の養育費は「監護について必要な事項」のうちの重要なものであり、「監護について相当な処分」として親権者から他方の親に養育費の分担を請求できることになっていますから、その変更も認められます。

親権者を変更したい

無理矢理に親権を押し付けても、子どものための監護養育は期待できません。「やむを得ない事由があるとき」には親権者を辞任することができますが、やむを得ない事由があるかないかは、親の判断1つでは決められず、家庭裁判所に申し立てて許可の審判を必要とします。家庭裁判所は、長期間海外に滞在せざるを得ないとか、刑に服する、重病であるなどの個々の事情を調査した上で辞任を許可します。再婚なども事情次第になります。許可の審判書の謄本を添えて戸籍係に親権辞任の届出をしてはじめて辞任の効果が生じます。
また、離婚のときにいったん親権者を定めたものの、その親権者が子どもに対して虐待を行っていたり、養育を放棄するなど、親権者として問題があるときや相手に親権を代わってほしいときは、親権者変更の申し立てをしなければなりません。変更できるのは「子の利益のために必要があると認めるとき」で、親の都合で変更できるものではありません。親権者変更の申し立てができるのは、子どもの父、母だけではなく、子の親族からもできます。例えば、妻を親権者と定めて協議離婚したものの、その妻が子どもを実家に預けたまま他の男性と同棲してしまい、子どもの面倒を見られないようなとき、夫はもちろん親権者の変更の申し立てをできますが、夫の父母からも親権者変更の申し立てができるのです。親権者変更の調停または審判が成立したときは、その謄本をもらって戸籍係への届出をすることが必要になります。子どもが虐待を受けているなど、子どもを保護する緊急の必要性がある場合は、親権者変更の調停または審判の申立てと同時に、審判前の保全処分として、仮の子の引渡し(暫定的に子どもを引き渡す処分)を申し立てることができます。

親権者の変更が認められるかどうかの判断基準は、子どもの利益のために親権者の変更が必要かどうかという点で下記のような要因があります。

  • 養育の環境
  • 子どもに対する愛情の度合い
  • 現親権者の養育態度
  • 現親権者の心身の健全性
  • 子どもの年齢,心身の状況,精神状態
  • 子どもの意思 など

しかし、申し立てをしても必ず変更されるとは限りません。家庭裁判所の実情をみると、親権者の指定及び変更事件の数は多いですが、そのうち不成立・取り下げも全体の約35%もあります。現状において、子どもが親権者となった親から虐待されたり、育児放棄されたりなど、かなり明白な事情を証明できなければ、子どもの現在の環境をひっくり返して、再度子どもを混乱させることは望ましくないと考えられているのです。

子どもに会いたい

子どもと離れて暮らす親には、離婚後、子どもとあったり連絡をとったりする面接交渉権があります。民法766条にも「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子の面会及びその他の交流について、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と面接交渉についてもふれています。
面接交渉について決めなくても離婚はできますが、離婚後の話し合いは難しい面があるので離婚前に決めておくのが望ましいです。話し合いでは、会う頻度や面接の時間・場所などを具体的に決めて離婚協議書などの文書にしておきます。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に面接交渉の調停を申し立てることができます。ただし、親として会いたいからたくさん会わせてほしいというだけでは裁判所は説得できません。面接することが、子どもの幸せの観点から利益になるということを説得的に裁判所に伝える必要があります。

子どもを引き取った側は、相手方とは会わせたくないと思っても、理由もなく子どもとの面会を拒否することはできません。ただし相手に会うことが子どもの幸せにとって害があるときは面接の拒否や制限をすることができます。例えば、暴力をふるう・養育費を支払わない・連れ去りの恐れがあるなどの場合です。

夫・妻が子どもを連れ去りました

子の監護をめぐって話し合いがつかないとき、とくに離婚問題自体がこじれて、夫婦が完全な別居状態に至った場合に、夫または妻が相手の意思に反して一方的に子を引き取ってしまう場合があります。
このような場合、子どもを取り戻す法律的な方法、手続きとしては、家事事件手続法と人身保護法とがあります。
「子の監護者の指定そのほか子の監護に関する審判の申し立てがあった場合に、家庭裁判所は別の申し立てによって仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる」というものです。そしてこの保全処分は、審判前における子の引渡しを含むとされていますので、この制度が利用できます。この申し立てが認められると、引き渡せという審判がなされます。保全処分には強制執行力があり、後に基本の審判でも監護者として指定される可能性が高いといえます。家庭裁判所が子どもを引き渡すように命じる審判や仮処分が出たにもかかわらず、子どもを引き渡さない場合は家庭裁判所が子どもを引き渡すよう説得したり(履行勧告)、お金を支払わせたりする(間接強制)ことで、子どもの引き渡しを促すことになります。
また、子どもの引き渡しには人身保護請求という方法もあります。これは、請求の日から1週間以内に手続きし、すぐに裁判が行われます。裁判所が子どもを引き渡すように命じたにもかかわらず、これに従わない場合、罰金や懲役などが課せられます。